「……と、ここは……?」

 気づくと私は何処かの森の中へと来ていた。格好はあの冒険の時の服装だ。リュックの重みからして、恐らく持ち物もそのまま。私はパソコンを開き、ゲンナイさんに問いかけた。


『デジモンワールドじゃ。最も、所詮パラレルワールドというやつだが』

「へえ……」

 私はぐるりと辺りを見渡した。1ヶ月振りのこの世界。特に変化は無いようだ。まあ、そもそもがパラレルワールドなので関係ないかもしれないけど。


『とは言っても、湊海の年齢以外は元の世界のままじゃ。人も、その関係もな』

「なかなか便利ですね、それ」

 その技術、他に生かせなかったのだろうか。


『ちなみに湊海は今1年生。あの中で1番の年下になったな!』

「い、1年生……」

 ゲンナイさんの満面の笑みに私は顔をひきつらせた。
確かに自分の手を見ると、いつもより小さく感じる。そして周りの景色もどこか低い。1年生の頃って、自分が思っていたより小さかったんだな――。


「本当に年齢操作するんですね……」

 私は改めてそう確認した。なかなか大変な事を引き受けてしまったかもしれない。


『うむ。そろそろみんな来る頃じゃぞ』

「あ、はい」

 私は頷き、パソコンを閉じた。……あれ? もしかしてみんなって事は――!


「湊海様!」

 その声に私はバッと顔をあげた。


「ラブラモン!」

 久しぶりに会ったラブラモンはどこか焦った様子で、私の姿を見るや否やほっと息をついていた。


「探しましたよ、どこに行ってらしたんですか?」

「ご、ごめんごめん。ちょっとね」

 私は頭をかいて、ラブラモンに謝った。
たった1ヶ月、されど1ヶ月――。私にとっては長い月日だった。それまで毎日共に過ごし、一緒に冒険したのだから。パラレルワールドだと何だろうと、こうしてラブラモンに会えるのは嬉しい。私は思わず頬を緩めた。


「どうされました?」

 ラブラモンは不思議そうに私を覗き込んだ。


「ふふっ、ううん。何でもない!」

 私は優しくラブラモンの頭を撫でた。……この感触も、久しぶりだ。

 すると、後ろからは他のみんなも続いていた。いつかのように心配を掛けてしまったようだ。おいジジイ。登場の仕方、少しは考えてくれ。


「湊海ちゃん!」

「あ、タケルく……」

 タケルくんにそう呼ばれ、私は思わず反応した――が、ある事に気づいた。


「……た、タケルさん!」

 そうだった。今はタケルくんより年下なんだった。私は慌てて名前を言い直した。
タケルくんに湊海ちゃんなんて呼ばれるのも大分新鮮だが、自分がタケルくんをさん付けで呼ぶのもなかなかだ。違和感しかない。
まあ、タケルくんが私をこう呼ぶのは何か可愛くて良いけどね!


「もう、勝手にどこか行っちゃ駄目でしょ?」

 タケルくん――いや、今はタケルさんか。タケルさんは少しは怒った様子で私にそう言い聞かせた。こんなタケルさん今まで見た事が無い。やっぱり年上と年下じゃ対応が違うのかな。


「ご、ごめんなさい……」

 私は苦笑いでそう謝った。
ええ……? 勝手にどこか行ったって何……!? あのじいさん、本当後で問い詰めよう。


「でも、無事で良かった。今度からは気をつけてね!」

「は、はい!」

 タケルさんが頭をぽんと撫でてくれたので、私は大きく頷いた。な、なるほど――。お兄さんなタケルさんも良いかもしれない。流石ヤマトさんの弟。やるな。


「湊海ちゃん!」

「湊海!」

 タケルくんに続いて、ヒカリちゃんと太一さんも私の元へやって来た。


「ヒカリちゃ……ヒカリさん! 太一さん!」

 タケルさんが年上という事は、必然的にヒカリちゃん――ヒカリさんも年上になる。太一さんはいつも通りだが、少し背が高く感じるな。まあ、私が縮んだだけなんだけど。


「めっ!」

 ヒカリさんは私の前に来て早々、ビシッと人さし指を立てた。正直なところ可愛い。


「私の手、離しちゃ駄目でしょ?」

「全く、いきなり駆け出すから驚いたぜ」

「えっと……はは、すみません」

 私はとりあえず謝った。一体さっきまでの私はどんなわんぱく坊主だったのだろうか。
逆に気になる。


 ヒカリさんと太一さんはにこりと笑うと、私の手をしっかり握った。

「……え?」

「さ、行こっか!」

「だな!」

 2人はずんずんと先へ進んだ。その後をみんなも続いていく。2人と手を繋ぐなんて
いつ振りだろうか。嫌な訳ではないが、少々こはずかしい。


「あ、あの、そんながっちり掴まなくても……」

『だーめ!』

  私はおずおずとそう申し出たが、2人は更に強く握った。そ、そんなに信用ないのかな――!?


「湊海ちゃんは1番年下なんだから、たまには甘えて良いんだよ?」

「そうそう。お前はいつも無理し過ぎなんだよ。もっと俺達を頼れっての!」

 そのヒカリさんと太一さんの言葉に、私は目を見開いた。……そっか。私は今――。


「……もちろんですよ。みんな、頼れるお姉さんとお兄さんですから」

 たまには、甘えてみても良いかもしれない。そう手を強く握り返すと、2人は優しく微笑んだ。





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