la mer

「…やっと来るぜ。疫病神がよ」

 サンジが立ち上がったクリークたちを見て呟く。柵にしがみついていたルフィはゼフに言った。

「おっさん!! あいつら追い払ったらおれ雑用やめていいか?」

「……好きにしろ」

 クリークの手下たちが再び雄叫びをあげる。ルフィはわくわくしているようで、目を輝かせていた。

「うほーーっ! 向こうもやる気だっ!! 燃えてきた!! おっさんおっさん! さっきの! 約束だぞ」

「願ってもねェ好条件だ。てめェに一年も雑用やられちゃ、店がメチャクチャになっちまう」

「パティとカルネは?」

 サンジが後ろのコックに尋ねた。二人はもう戦闘態勢らしい。

「操作室行って『ヒレ』開いてこい」

「え……いいのか!? 敵に足場与えることになるんだぜ!?」

「構わねェよ。店ん中戦場にしちゃ、クソジジイがうるせェだろ」

「なんか言ったか、クソガキ」

「オー、うるせェっつったんだよ」

 ゼフに向かってイーっとするサンジが面白く、ララは笑ってしまった。

「その船を渡せ、コックどもーーっ!!」

 手下たちが攻めてくる。ルフィが伸びる手を使って、手下たちを海へ落とした。そしてクリークの近くの柱へしがみついた。
 すごい、とララが感心していると、なにやら音楽が鳴り始めた。サバガシラ一号のテーマソングだ。

「パティとカルネね…!」

 魚の兵器はクリークの船のもとに向かい、銃弾を発射した。同時にヒレが開き、甲板はより広くなる。
 クリークのところへサバガシラ一号は行ったが、片手で制されてしまった。

「気合だけだな、あいつら」

 煙を吐きながらサンジは言う。店の方にサバガシラは飛ばされ、あわやというところに、サンジはたんと床を蹴って大きくジャンプした。そしてガコンとサバガシラを海の方へ蹴り飛ばす。
 相変わらずサンジの蹴りはすごい。見とれていると、きれいに着地したサンジは得意げに笑った。

「な、なんて脚力…!!!」

 手下たちは怖気付く。甲板に落ちたサバガシラからパティとカルネが出てきた。

「くぬヤローがサンジィ!!!」

「てめェは味方を殺す気かァ!!!」

「ああ」

「ああじゃねェよイカれ煮込み!!!」

「強大な2つの戦力を失うとこだったんだぞ、アホスパゲティ!!!」

 二人が突っ込んだところで、ドサっと誰かが倒れた音がした。そちらを向くと、コックたちが甲板に倒れていた。

「何が強大な力だ。武器を持とうがコックはコック。てめェらは大人しく陸の厨房で料理でもしてな!!」

 手下たちが言う。

「くそ…こいつら強ェ…!!」

「まじで今まで追い払ってきた奴らとは違う!!」

 弱音を吐くコックたちに、パティとカルネが喝を入れ、手下たちに立ち向かっていった。私も戦おうかとララは前へ出ようとしたが、サンジに止められた。

「まだ本調子じゃねェだろ。おれがやるから下がってな」

 ララはむっとしてサンジを見る。

「私は何のためにゼフから足技を教わったのよ。この時のためでしょ!」

「おいララ……!」

 サンジの制止を無視して、前へ出る。向かってきた手下の鳩尾に蹴りをかまし、さっと屈むと後ろに足払いする。倒れた手下の手元を蹴り、武器を遠くへ追いやると、後ろから来た手下の顔に思い切り肘打ちし、怯んだ手下の脇腹へ重い蹴りを入れる。手下は甲板へ崩れ落ちた。

「なんだこの嬢ちゃん、強ェ…!!」

 ざわめく手下たちを無視して、ララは一人一人着実に倒していく。四年前のあの日から、ララはもっと強くなりたいと願い、ゼフにより厳しくしてほしいと懇願した。ララが上手くできなくても、ゼフは一度もララを蹴らなかったが、代わりにとても怒られた。怒声を浴びせられる度にくじけそうになった。でも守られるだけなのは絶対に嫌。女も強くなければ、この世の中は生きられないのだ。

「ララ!!」

「!」

 サンジの声がしたと思えば、次の瞬間には彼の腕の中にいた。顔を上げてあたりを見ると、パティとカルネが倒れているのが見えた。

20180112

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