雄叫びとともにクリークたちが攻めてくる。一階の甲板からその様子を見てララは身構えていたが、攻めて来る直前、巨大なガレオン船がスパッと二つに切れた。
「え……!!」
何が起こった!?と皆が騒然とする中、ゼフがコックたちに指示する。
「錨を上げろ!!! この船ごと持ってかれちまうぞ!!!」
「はいっ」
「あいつだァ!!」
クリークの手先の叫びにララはそちらを見た。そこには四角形の船に乗った、帽子をかぶった男がいた。
「ドン・クリーク、あの男です!! 我々の艦隊を潰した男!!」
「あいつが…一人で50隻の船を沈めたってのか…!?」
傍にいたパティが呟く。
「…じゃあ、たった今クリークの船を破壊したのも!?」
「特別な武器を持ってるわけでもなさそうだ…」
「武器なら背中にしょってるじゃねェか!」
ゼフの言葉に、男の後ろを見る。それは十字架のような大きな剣だった。
「そんな…まさか! じゃああの剣一本で大帆船をブッた斬ったとでも!?」
「そうさ……鷹の目の男とは大剣豪の名。奴は世界中の剣士の頂点に立つ男だ」
「あれが鷹の目……!!」
さっきはよくわからなかったが、その凄さを目の当たりにした今、ララはその壮絶さに身震いした。グランドラインにはこんな人がどれだけいるのだろう。
「畜生てめェ!! 何の恨みがあっておれたちを狙うんだ!!!」
クリークの手下が叫ぶと、鷹の目は言った。
「ヒマつぶし」
「フザけんなァーー!!!」
手下がピストルで鷹の目を撃つ。鷹の目は大きな剣を抜くと、すっと剣を動かした。
「え…外れたぞ!?」
「外したのさ。何発撃ち込んでも同じだ。切っ先でそっと弾道を変えたんだ」
いつの間にクリークの船に乗ったのか、緑の人が手下に言った。てめェ誰だ!?と問う手下を無視し、緑の人は鷹の目に問いかける。
「その剣でこの船も割ったのかい」
「いかにも」
「なるほど…最強だ。おれはお前に会うために海へ出た!!」
「……何を目指す」
「最強」
腕に結んでいた黒のバンダナを、頭に巻きながら緑の人は言う。
「ヒマなんだろ? 勝負しようぜ」
「こいつ…ゾロだ!! 三刀流のロロノア・ゾロだ!!」
どよっと手下たちが騒ぎ出す。ロロノア・ゾロといえば海賊狩りで有名な人だ。まさかここにいるなんて、考えてもいなかった。
「哀れなり、弱き者よ。いっぱしの剣士であれば剣を交えるまでもなく、おれとぬしの力の差を見ぬけよう。このおれに刃を突き立てる勇気は、おのれの心力か…はたまた無知なる故か」
「おれの野望ゆえ。そして親友との約束のためだ」
二人の気迫にごくりとララは唾を飲む。そうして戦いは始まった。
鷹の目が取り出したのはとても小さな剣だった。それでも鷹の目が優勢で、ゾロは心臓に刃を突き立てられた。しかしゾロは退かなかった。
「小僧…名乗ってみよ」
鷹の目が剣を抜いて聞く。ゾロは構えながら答えた。
「ロロノア・ゾロ」
「覚えておく、久しく見ぬ『強き者』よ。そして剣士たる礼儀を持って世界最強のこの黒刀で沈めてやる」
鷹の目は船を割った刀剣を抜き、結果、ゾロは破れた。
「これがグランドラインの……世界の力か…!!」
ゾロは海に落ち、仲間二人が助けに潜る。
「チキショオオーーーっ!!!」
ルフィの声がしたと思えば、彼は腕をゴムのように伸ばし、鷹の目のところに飛んでいくところだった。
「何あれ…!!」
「悪魔の実の能力者だろう」
ゼフの言葉にララははっとする。あれが能力者。今まで見たことがなかった。
ルフィの攻撃を鷹の目はかわし、ルフィは船へ激突する。すると海の中からゾロを抱えて男二人が出てきた。
「アニキ!! アニキィ!! 返事してくれ!!」
「ゾロ!!」
「おい早く船に乗せろ!!!」
長鼻の男が小舟からゾロを引き上げる。鷹の目が口を開いた。
「猛ける己が心力挿して、この剣を越えてみよ!! このおれを越えてみよ、ロロノア!!!」
「……鷹の目のミホークにここまで言わせるとは……」
ゼフが呟く。
「ウソップ、ゾロは無事か!?」
「無事じゃねェよ!! でも生きてる!! 気ィ失ってるだけだ!!」
ルフィの問いにウソップが答えたその時。ゾロがすっと剣を天にかかげた。
「…ル…ルフィ…? 聞…コえ…るか?」
「ああ!!」
「不安にさせたかよ…おれが……世界一の剣豪にくらいならねェと…お前が困るんだよな……!!」
がふっとゾロは血を吐きだす。そばにいた男二人がもうしゃべらねェでくれと懇願するが、それでもゾロは言葉をつづけた。
「おれはもう!! 二度と敗けねェから!!! あいつに勝って大剣豪になる日まで、絶対にもうおれは敗けねェ!!! 文句あるか、海賊王!!」
ルフィはにっこりと笑った。
「しししし!! ない!!」
「いいチームだ。また会いたいものだ、お前たちとは…」
そう言って鷹の目は船に戻ろうとする。それをクリークが引きとめた。
「オウ鷹の目よ……!! てめェはおれの首を取りに来たんじゃねェのか。このイースト・ブルーの覇者、ドン・クリークの首をよ!!」
「そのつもりだったがな。もう充分に楽しんだ、オレは帰って寝るとする」
「まァそうカテェこと言うな。てめェが充分でもおれはやられっぱなしなんだ。帰る前に死んで行け!!!」
クリークが体から銃弾を放つ。鷹の目が剣をふるうと大きな波が生まれ、波が静まった時には鷹の目は消えていた。
20170103
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