la mer

 目覚ましを止め、ララはベッドから起き上がった。今日はララの誕生日。うきうきしながらウエイトレスの制服に着替え、化粧をし部屋を出た。






 夜になり、お店が閉まる。夕飯のまかないを食べるため、二階の食堂に行くと、一斉にクラッカーが鳴った。

「ララ、誕生日おめでとう!!」

 色とりどりの紙テープを浴びたララに、コック達が口々に言う。ララは驚きながらも、お礼を言いながらいつも座る席に座った。
 パティとカルネがそわそわしながら近付いてくる。何だろう、と見ていると、二人はせーので後ろから何かを取り出した。

「誕生日おめでとう、ララ!!」

 それは大きなプレゼントだった。

「わあ、ありがとう!!」

「おれたちコックからのプレゼントだ」

「開けていい?」

「もちろん!」

 わくわくしながらリボンを紐解く。包み紙を丁寧にはがし、中にあった箱を開けると、そこには可愛らしい化粧ポーチがあった。

「かわいい! この大きさの欲しかったの!!」

 コック達はそれはよかったと笑いながらこちらを見つめる。誰が選んだのか聞くと、パティとカルネというから驚きだ。2人がこれを買うところを想像して思わず笑っていると、ドアが開いた。

「おめでとう、ララ!」

 サンジがホールケーキを持ってこちらにやってきた。召し上がれとララの前にケーキが置かれ、ララは目を輝かせる。

「わあ、すごいケーキ! サンジが作ったの?」

「いや、クソジジイさ。今厨房で仕込みやってる」

 きっと照れ臭いのだろう。ララはあとでお礼を言おうと思い、大好きなチョコレートケーキにナイフを入れた。
 ゼフの作る料理は皆おいしい。しあわせ、とケーキを食べてはにかむララに、隣に座ったサンジが言った。

「ほんとにうまそうに食べるなァ、ララは」

「ほんとに美味しいんだもん。ゼフのも、サンジのも、みんなのも美味しいよ?」

「はは、そりゃ何よりだ……ほら、これおれからのプレゼント」

 綺麗な包み紙に包まれた、小さな細長い箱だった。何だろう、と包み紙を剥がし、箱を開ける。

「これ……!」

 猫がモチーフの腕時計だった。

「前欲しがってたろ?」

「うん……! ありがとう、サンジ!!」

 綺麗な、それでいて可愛らしい腕時計を、早速左腕につける。愛らしい猫の長針が、チクタクと動いていた。
 微笑みながら、じっと時計を見つめるララを、サンジもまた微笑んで見つめていた。








「ララちゃん、可愛いよなァ」

 にこにこと時計を見ているララを見て、とあるコックは言った。すかさず隣にいた先輩コックが声をかける。

「おい、ララはダメだぞ。ありゃサンジのだ」

 サンジのあの顔を見ろ、と先輩コックが指差す。確かに穏やかに微笑むその表情は、今まで見たことのない表情だった。
 視線に気づいたのか、サンジがこちらを向いた。

「!!」

 二人はびくっと体をこわばらせる。サンジは、何見てんだコラと言わんばかりに睨んできた。

「ねえ、サンジ」

 ララに話しかけられ、サンジはくるりと横を向く。その表情は先ほどとはうって変わって優しげな顔に変化していた。

「……うん、ありゃサンジのだ」

「あァ……」

 二人は納得して、ララが切り分けてくれたケーキに口をつけた。

20171220
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