la mer

サンジ奪還編F

目覚めると、そこは暗闇だった。
目隠しをされているとわかり、手を動かそうとするも縛られているようで、身動きが取れない。

「何これ…!?」

「あら、お目覚め?」

プリンの声がした。声のした方に顔を向ける。

「”危険分子”ララ。それがあんたの名前ね」

「!?」

「ふふ……あんたが気を失ってる間に、この数日間の記憶を見たわ。麦わらの一味であり、サンジの幼馴染――いや、恋人といったほうがいいでしょうね」

面白がるように、くすりとプリンは笑う。

「サンジは私と結婚式を挙げて、そして私に殺される……それを知った今、どういう心境なのかしら? 悲しい? それとも悔しい?」

「……それを聞きたいがために、私をビッグ・マムのところに渡さなかったの?」

挑発に乗ってはいけない。ララは冷静な気持ちで尋ねた。

プリンは興が削がれたようにため息をついた。

「そんなわけないじゃない。この結婚式が『無事に』終わったら、あんたをママに渡すわ。無事に終わらなかったら、人質にもできるし……それまで心底憎いだろう私の部屋で、最後の時を過ごしなさい」

なんて悪趣味なんだろう。早くここを出なければ。
ララは脱出できないかと、自分を縛っている縄を探るが、隙間もなくほどけそうになかった。
心の中で舌打ちしたとき、コンコンと扉をノックする音がした。

「プリン様、そろそろお時間です」

「今行くわ……ここで大声を出しても無駄よ。兵士たちは皆こちら側の人間だから」

囁くように言うと、プリンは扉を開け出て行った。
手も足も動かせない状態で、サンジを助けることもできずにここでじっとしているしかないのか。ルフィたちが今どうしているかもわからない。レイジュはプリンの本性を知ったはずだが、記憶を操れるということは、その記憶を消した可能性もある。サンジとヴィンスモーク家が殺される計画があることを知っているのは、自分だけかもしれない……。
どこからか陽気な音楽が聞こえ、ララははっとする。とうとう始まってしまった。
いてもたってもいられず、必死に縄を解こうとするが、縄はびくともしなかった。



どのくらい経っただろう。耳を澄ませて聞こえたのは、ピストルの音、そして様々な金属音や爆発音。音楽はとうに止んでいた。サンジは殺されたのか、生きているのか。それだけが知りたかった。
ふと窓が開く音ともに、何かが中に入ってきた。その『人』は自分の縄を解こうとする。

「何、誰…!?」

「私よ」

想像してなかった人物だった。目隠しが外され、三つの目と目が合う。

「……どういう風の吹き回し? 私をビッグ・マムに引き渡すわけ? サンジは生きてるの? レイジュさんは?」

「引き渡しはしないわ、サンジもレイジュも生きてる。乗って」

宙に浮かんだ絨毯に乗り、プリンが言う。どちらも生きていると聞き、ララは心底安堵しながらも、自分をどこに連れて行く気かわからず安心はできなかった。しかし彼女の目を見ると、いつになく真剣だった。言われた通りに乗ると、絨毯は窓の外へと舞い上がった。

「どこに行く気?」

「……姉さんのところよ」

何のために行くのか聞くも、教えてはくれなかった。まさか、姉に自分を始末させるのか。
降りたくなったが高く上がっているため降りられない。下を見る自分に、プリンが言った。

「何してんのよ、落ちるってわからないの?」

ララはむっとして彼女を見る。

「わかるわよ、ただ私を姉に始末させる気なら、逃げようと思って」

「……始末はさせないわ」

じゃあ何をさせるんだ。そう聞いたものの、プリンは何も言わなかった。

何か争っているのか、爆発音ととに地面のところどころで爆発が起きる。ビッグ・マムの手下たちから逃げるように、キャピタルで移動するベッジのところへ、絨毯は滑り降りた。

「ベッジ義兄さん!!」
「プリンさ…プリン!! 小娘とて容赦しねェぞ!?」

銃を向けられるも、プリンは怯まなかった。

「シフォン姉さんに用がある!! すぐに姉さんを出して!!」

ベッジは驚いたようだったが、胸元にある扉のようなものを開いた。中にいるらしく、プリンがそこからのぞき込む。

「シフォン姉さん、ママがまた食いわずらいを起こしたの!! おさめるにはあのウエディングケーキを作らないと…!!」

「私のシフォンケーキが必要なのね!! ……でもゴメンね、プリン。私はローラのようにここを出ていく…!! もうママやこの国がどうなろうと構わない……」

「そうだ!! わかったら失せろ、プリン!!」

「違うの……私の本当の目的も……ママやこの国のためじゃない!! ママを早く止めなくちゃ…!! あの人と――その仲間たちが!! 殺されちゃうの!!!」

震える声で、プリンは言った。あの人とその仲間たち。サンジとルフィたちのことだと、ララはピンときた。
サンジを殺すと言っていたプリンが、どうして助けたいと思うのだろう。疑問に思ったが、肩を震わせる彼女に尋ねることはできなかった。

20190502
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