45*あの時と同じように



『おぉっと、またクーラの勝利!これで60連勝!通算500勝!このアマゾン・リリーでは蛇姫様の他にクーラに勝てる者はもう居ない!』

女ヶ島、賑やかな闘技場のスピーカーから実況の女が興奮気味に伝える。

「……よし!」

クーラは右の拳を天高く突き上げた。




ーーーー





「キャプテン!ねぇ、これ見て!三億ベリーだって!また上がったね!」

ベポが一枚の手配書を持ってローに駆け寄る。

「……ああ。」

手配書をベポの手からさっと取り上げ目を通すと、ローはニヤリと笑った。
その手配書の写真の女は長い水色の髪をしていて、ダガーナイフを艶麗に笑う顔の前で光らせている。キャミソールから露出した右肩から二の腕にかけて、ローの胸のそれを思わせるようなハートの形をした刺青が彫られていた。

『"ハートの猫"、クーラ 300,000,000ベリー』

「……あの時より段違いに良い女じゃねェか。」

「船長、そろそろ次の島に着きます!お、それクーラじゃないですか!三億かー!早く会いてぇな!」

まじまじと手配書を見てシャチが言う。

「シャチは一向に成長しねェな……」

「酷ぇ!」




ハートの一味が船を着けた島は新世界の中では比較的穏やかな気候をしていた。
繁華街もあり、夜になると酒屋には人が多く入っていた。
ローもその賑わいの中、一人でカウンターに座り、ブランデーの注がれたグラスを傾けていた。

ローのブランデーが二杯目になった頃、騒がしい店の中が静まり返ったと思えば、客達が「おお、良い女じゃねぇか!」と口々に言い始め、別の意味で騒がしくなった。
ローは特に気にすることもなく、持ったグラスを眺め続けている。

すると、背後から女の声がした。


「隣、空いてるかしら?」


聞き覚えのある、女の声だった。

ローは驚くこともせず、「……ああ。」と、あの時と同じように答えると静かに丸椅子を回転させ、その女を見た。
身体つきはあの時と殆ど変わらない。顔つきを比べると少しの幼さはあるが、あの時よりも凛々しくなっていた。

その女は喜びで顔をくしゃくしゃにしてローに抱き着いた。

「……っ!ロー!」

ローは口角を吊り上げるとその女に腕を回し強く抱き締める。

「クーラ。」

「ロー……っ!やっと会えた!」

「6年振り、だな。」


クーラは変わっていないローの体温、ローの匂いに今までにないくらい胸がいっぱいになった。

気の済むまで抱き合うと、クーラはローの隣に座り、酒を注文した。

「"ハートの猫"、三億ベリー。良くやってんじゃねェか。」

クーラは顔の前で手首を曲げて手を軽く握り猫の様なポーズを取って、「にゃん」とおどけて見せた。

「えへへ、海に出たのは16歳なんだけど、ローに似合う女になろうとして2年掛かっちゃった。ローもどんどん凄くなって行くんだもん。私、まだまだだったかな。」

ローがクーラの頭を撫でる。

「いや、十分相応しい女になった。さすがおれの愛する女だ。」

クーラが前に置かれたブランデーのグラスを持つと、ローもグラスを宙に掲げた。

「乾杯!」
「乾杯。」

お互いのグラスをぶつけ、お互いに目線を合わせると、笑い合う。

「ロー、格好良くなったね。」

6年前より顔つきも身体つきも更に大人の色気を醸し出すようになっていたローに、顔を赤らめる。

「前よりモテてるんじゃない?」

「そうだな。」

「むっ。」

ローの言葉に口を尖らせるクーラ。

「それはお前もじゃねェか。」

「そうなのかな?ローしか見てないから良くわかんないや。」

ローも気持ちが高揚してるのだろうか、プッと吹き出して笑った。今まで見せなかった仕草にクーラは一層の嬉しさを覚える。

「ククッ、面白ェこと言うな。」

「だってほんとだもん。世界で一番良い男だよ、"死の外科医"トラファルガー・ローは。」

クーラは 「他の男なんて見てる暇ない」と言いながら首を横に振ると、マスターに「同じものを」と、三杯目のブランデーを頼んだ。

「てめェの女にそう言われると良い気分だな。」


会っていない間の話に花が咲き、気付けば二人とも何杯目か分からない程、酒のグラスを空にしていた。

「酒強くなったんだな。」

「うん。ローほどじゃないだろうけど。」

ローが「さて、」と席を立って二人分の酒代をカウンターに置くと、考えるように眉を寄せた。

「あの時、おれは何て言ったか……」

「『おれはこのまま宿に戻るが』だよ。」

「そうか。」

「あら、誘ってくれないの?」

「今ならもっと真剣に誘うさ。」

ローが右手に変わらずの愛刀、鬼哭を持つと左手をクーラに差し出した。

「これからずっとお前はおれの女だ。着いてこい、クーラ。」

「勿論。一生あなたに着いていくわ。」

差し出された手を取ると、二人はそのまま酒場を後にした。







「そういや、何で猫なんだ。」

「目が猫っぽいのと、高くジャンプして着地する時に手も付いちゃう癖があって、それも猫に似てるから、みたい。チャームポイントに猫耳でも着けようかな。」

「……着けるなら首輪にしろ。"ハートの飼い猫"、悪くねェだろ」

「ははっ、確かに悪くない。」




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