22*これからのこと



「ね、私は何をしたらいいの?」


ベポのもふもふを堪能したクーラは二人に聞く。


「そうだな、やることといったら雑用くらいしかねぇが……」

「わかった。色々教えてね、シャチ。」

「アイアイ!」

「ふふ、ベポもお願いするね。」

「訓練も一緒にやろう!イヴ強かった!シャチ、負けちゃうんじゃない?」


シャチの顔から一気に汗が吹き出る。


「い、いや、負けねぇよ!たぶん!」

「楽しみにしてる。」


イヴが不敵に笑う。


「ほ、ほらそろそろ晩飯の時間じゃねぇか、行こうぜ!」


一層額から汗を垂らすシャチに連れられ食堂へ。
食堂ではちらほらと人が集まって来ていた。
夕食を受けとる時にコックに挨拶をしたが、忙しそうにしていて、相手にして貰えなかった。
夕食の乗ったトレイを持って空いている席を見つけ座る。イヴの左隣にはベポ、ベポの向かいシャチが座る。

いただきます、と手を付け始めるとローが食堂に入ってきてイヴの右隣の席に着く。
ローに続いて入ってきたペンギンはふたり分のトレイを持ってローの向かいに座り、ひとつをローの前に置いた。


「キャプテン、次はどこに行くの?」


ベポが肉をフォークに刺しながら聞く。


「火拳屋が海軍に捕まったことは知ってるな。近い内に処分が決まるだろう。いずれにせよ白ひげが動かねェはずがねェ。海軍本部に乗り込むか、あるいはインペルダウンへ救出に行くか……この近くで何か起きるのは確かだ。それまでこの付近に居る。」


(よく分からないな……)


「そういえば慌てて出航したけど、何かあったの?」

「麦わら屋が騒動を起こして海軍大将が出てきたんだ。大将には会わずに済んだが、くまが出てきてユースタス屋と戦って何とか逃げてきた。」


(麦わら……って手配書で見たことある麦わらのルフィかな?大将?くま?)
クーラの頭に疑問符が浮かぶ。
(うーん、やっぱり聞いても分かんなかったな。)


「つまり海軍から逃げてきたってことだ。」
ペンギンが要約する。


「にしても、ルーキー3人の共闘はほんと格好良かったなー!もちろん、うちの船長が一番格好良かったですけどね!」


シャチが興奮気味に言う。


「……あいつらはおれがやるまで死なねェで欲しいもんだ。」


ローが楽しかった出来事を思い出したようにフッと笑った。


「楽しそうね、ロー。」

「これが、海賊というもんだ。」





食事を済ませ空になったお皿が乗ったトレイをキッチンの流しへ持って行くと、すでに大量のお皿がシンクに置かれてあり、コックが一つ一つ洗っていた。


「お皿洗いお手伝いさせて貰ってもいいかしら。」

「おお!さっきは声掛けてくれたのに、ごめんな。おれはイルカ。この船のコックだ。」


イルカは、かわいらしい名前とは裏腹に、長身で無精髭、堀の深い目にオールバックにされた髪型と、まさにハードボイルドという言葉が相応しい男だった。


「じゃあ、頼めるか。おれは明日の仕込みをする。」


「任せて。この量をいつもひとりで?」


クーラはパーカーの袖を捲り、イルカからスポンジを受け取る。


「ああ。たまに暇そうな奴を捕まえて手伝わせるんだが、なかなかタダでは動いてくれなくてな。」

「じゃあ私が手伝うわ!料理はあまり上手じゃないけど、切ったりお皿洗ったりくらいは出来るわ。もちろんお金なんか要求しないから安心して。」

「本当か!?それは助かるな!……えっと、」

「イヴよ」

「よろしくな、イヴ。それにしても船長が女を乗せるとはな。よっぽど気に入られたのか。」

「そうみたい。」

「あーあ、おれも女を船に乗せてみたいぜ。」

「あら、イルカさんモテそうだけど?」

「ああ、モテるぞ。男にな。」

「そ、そうなの……そんな世界もあるのね……」

「冗談だ。」


他愛ない話をしながら、お互いの仕事を終わらせた。


「これ、俺の好物だ。お礼にはならないかもしれないが、食べるか?」


イルカは冷蔵庫からプリンの乗った皿を二つ取り出し一つをクーラに差し出した。


「わあ、私もプリン好きなの!ありがとう!」

「それは良かった。部屋に戻って食べると良い。」

「あ、明日の朝は何時に来たら良いかしら?」

「そうだな……7時頃、頼めるか?」

「ええ。じゃあまた明日!」


クーラはプリンを受け取り、上機嫌で船長室へ戻った。





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