15*偶然だと思った
(困ったなあ……昨日は上手くいったけど、今日はだめかもなあ。)
「……お前、何を飲む。」
「ローと同じものでいいわ。」
「ウイスキーを2つ」
夜景のきれいな窓際の席に案内された二人は、酒を注文すると、暫く夜景を眺める。
「綺麗ね。泡が夜の光を映してる。あ、あれがシャボンディパークね。」
「……」
ウィスキーが二人の前に置かれ、静かに乾杯をして飲み始める。
(うわあ……苦いなあ……)
「てっきり一晩だけの行きずりの女だと思ってたんだけど。あなたも言ってたじゃない。」
「……それで終わるには惜しくなった、とでも言っておこう。」
「初めての相手の思い出が増えそうで嬉しいわ。」
「……思い出、ねェ……。」
ローは早くも2杯目を頼む。
クーラのグラスはまだ少ししか減っていない。
「なんだ。昨日よりペースが遅ェじゃねェか。」
「そうかしら。」
(飲まなきゃ……。)
クーラは一気に飲み干し2杯目を頼む。
「そういや、お前はここの人間か?」
「いいえ違うわ、東の海出身なの。旅をしててね。もうそろそろ帰ろうと思うんだけど。」
「へェ。それがいい。ここ辺りはもう少しすると荒れるぞ」
「そういえば、行きは大きい海賊船に乗せてもらってきたの。強そうだった。左腕が無かったけど、威圧だけで人を気絶させてた。シャンクスさんっていう人、知らない?」
「……!そいつを知らねェ海賊はいねェ。ついこの間新世界で白ひげと会ったという話を聞いたが。……奴はシャボンディにいるのか。」
「やっぱり強い海賊なのね。いえ、私を下ろしたら、近くに用があると言ってすぐ出港したわ。」
「そうか。……処女だったってことは、関係を持ってはねェってことか。」
「とても紳士だったわよ。」
フフッと笑って見せるとローの目付きが悪くなった。
「なぁに?怖いわ。」
「……別に、何でもねェよ。」
ペースを上げたクーラは一気に酔いが回って強烈な睡魔に襲われた。
「ロォ…………すー、すー」
「オイ。……しょうがねェな。」
ローは酒代を払うとクーラを抱きかかえ、自分のホテルに戻った。
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