Short series | ナノ


▽ Don't remember night(???・後編)

「イヴって酒飲んだらどうなるんだ?」

「さあ……飲むとこ見たことねぇしな。船長は?」

「ねェな」


イヴの周りを囲む三人の男たちはイヴの様子を時折気にしながら食事を進めた。
イヴが食事を終えても満足そうに笑っているだけで特に変わった様子はない。


「そういやシャチ、また物置荒らしてただろ」

「荒らしてねぇよ。荷物取った後ちゃんと片付けたぞ」

「あれは片付けた内に入らねぇって言ってんだ」

「あぁ?ペンギンは細けぇんだよ!」

「そうだそうだ!ペンギンは細か過ぎなんだよ!それに心配症だしナルシストなんだよ!もー!」


ペンギンとシャチが咄嗟に二人の会話に突如入って来た人物を見ると、顔の赤いイヴだった。

「……イヴ?」

「シャチは大雑把過ぎるし空気読まなさ過ぎー」

いつもより呂律の回らない喋り方をするイヴ。

「酔ってるな……」

「うるさいペンギン!」

ぺしりと向かいのペンギンの頭を叩いた。


「ローさんは怖過ぎるし強すぎ!あと格好良すぎてだめー」

ローは眉をぴくりと動かすと、にやりと笑った。


「おれらは悪口なのに船長は怖い以外悪口じゃねぇぞ……」

イヴは頬を膨らませたままうんうん、と何度か頷いた。

「一人で怒って一人で納得してんな……」

怒っていたイヴの表情が瞬く間に変わり、目を細めてシャチに笑いかけた。


「シャチぃ……すきー」

「うお!?」

シャチの肩に額をぐりぐりと押し付ける。

「待て、落ち着け、こいつは酔っ払ってる。というか何だこの可愛い生き物」

「シャチ……そこ替われ」

「おいイヴ」

ローが短く言うと、イヴがローの方に振り向いた。


「何ですかー?」

「寝ろ」

と、イヴの身体を抱き上げようと手を伸ばすが、ローの腕を叩いて大きく首を横に振った。


「やだ!一人で寝るのやだー……誰か一緒に寝て?」

ペンギンとシャチが同時にガタッと席を立った。


「よし、おれが」

「おれが寝てやる、安心しろ」

「船長ずるい」

「じゃあコインで決めよーシャチー」

「お、おう」

シャチがつなぎのポケットから一枚コインを取り出すと掌に乗せた。

「表」

「裏」

「おれは……表かな」

「シャチとローさんが表でペンギンが裏ねー」


シャチが親指にコインを乗せ弾くと宙でくるくると回転し、落ちてきたものを手の甲ともう片方の手で受け止めた。
ゆっくりとコインの裏表を確認する。


「……裏だ」

その瞬間、ペンギンが大きくガッツポーズをした。


「さて、行くかイヴ」

「はーい」

ペンギンがイヴの元に行くと、ひょいとイヴの身体を抱えた。

「じゃあおやすみなさーい」

イヴがペンギンの首に手を回すと、ペンギンがイヴの部屋に向かって歩き始めた。

イヴの部屋に着くと、ベッドに優しく寝かせる。


「……で、何で着いてきてんすか、二人とも」

ペンギンの後ろにはロー、シャチがいた。


「見張りだ」

「勝った意味ねぇじゃねぇか」

「んん……ねーペンギン、肩揉んでー腰もー」

「イヴは酒が入ると女王様化するのな……」

「シャチうるさい。ペンギンはーやーくー」


イヴがうつ伏せになり、足をばたばたとさせ催促した。

「はいはい」

ペンギンがベッドに上がり、イヴに跨がると肩を指圧し始めた。

「結構凝ってんな……」

「駄目だな。ペンギン、おれと代われ」

ローの威圧感に負けペンギンがしぶしぶイヴの背中から下りると、代わってローがうつ伏せのイヴに跨がった。


「ん……あぁー、気持ちいいー」

「外科医を舐めるな」

「そこ良いですー、ローさん……っ」

「声が、色っぽいな……」

シャチがそう漏らすとイヴのソファーに座った。

「それにしてもすげぇ画だな。船長がマッサージしてる」

「だな……」


ローがイヴの身体をほぐし終わる頃にはシャチは既にソファーに座ったまま目を閉じ鼾をかき始めていた。
イヴも気持ちの良さに身を任せて目を閉じていた。


「これでだいぶ良いだろう」

「……ん、あ、寝てた!ありがとうございます、ローさん」

ローが背中から退くと、イヴが仰向けになり開ききらない目で笑った。

「じゃあ寝ましょうー……っと」

着ていたパーカーを突如として脱ぎ始め、ゆっくりとジーンズも下ろし下着姿になると、脱いだものをベッドの外へ落とした。
二人の男は驚きつつ、そんなイヴの姿を凝視した。


「……これは、誘ってるんですかね……」

ペンギンがイヴに近付いて顔を窺うと、イヴは力尽きたように寝ていた。

「寝た……」

「……今後はおれの前でしか飲ませねェようにする」

「そもそも飲ませないようにお願いします。同盟の前では毒過ぎる」



ーーーー




「……と、言う訳だ。ヤってはねぇから安心しな」

「……いや、それは安心したけど、でもなかなか問題ありだね、私。だからお酒飲まないようにしてたのに……」


毛布で肌の露出を隠しているイヴが溜め息を吐いた。


「ローさん、ごめんなさい。ペンギン、シャチもごめん」

「ああいうのもありだと思うぜ」

いつの間にか起きていたシャチがからかうように笑った。

「蛇の生殺しとはこう言う事だな」

「おれらが紳士で良かったな、なあ船長」

「恥ずかしい……」



毛布にくるまるイヴの耳元に両隣の男が顔を近付けて、同時に同じ台詞を言った。


「また一緒に寝ような」




ーーーー




「頭は痛いけど身体はすっきりしてるのはそう言う事だったのか。と言うか何で二人とも上半身裸なんですか」

「寝る時はいつもこうだが」

「船長に同じ」

「……とりあえず服着るのでみんな出ていってもらって良いですかね」

「却下」

「ええー、起きましょうよローさん……」

prev / next

[ ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -