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「う、うぁぁ……っ!痛い、いたい……っ!」


気を失いそうになる程の痛みがイヴを襲う。


「頑張れイヴ!もう少しだ!」

「うん……っ!」


ローはイヴの手をしっかりと握っていた。
イヴはローよりも強い力で握り返して精一杯に力んだ。


「頭が見えましたよ!もう力を抜いて!」


助産師が言った。


「イヴ、もうすぐだ、もうすぐ……!」


小さな命が産まれた声がしたのはそのすぐ後だった。
ほぎゃあ、ほぎゃあと泣くその新しい命の声はイヴとローをひどく安心させた。


「元気な男の子ですよ!」


へその緒が切られると、イヴの腕に新しい命が置かれた。


「赤ちゃん……私たちの赤ちゃん……」


イヴは涙ぐみながらその小さな命に触れた。


「イヴ、良く頑張ったな……」


ローはそう言うとイヴと、イヴとの子どもを包み込む様に抱いた。




 ̄ ̄ ̄ ̄



『男ならガルフ、女ならソーラ』


ローはそう言っていた。




 ̄ ̄ ̄ ̄



「ロー、抱っこしてあげて」

「あ、ああ……」


イヴの出産から一週間が経った。
ローはまだ抱き慣れていない様子で、ベビーベッドからそうっとガルフと名付けた自分の子どもを抱き上げた。
ガルフはもぞもぞとローの腕の中で小さく動くと、ローの人差し指を掴んで口に入れようとした。


「それは乳じゃねェぞガルフ。おいイヴ、ガルフはお腹が空いてるんじゃねェか」

「えー、さっきあげたばかりよ」


ガルフはローの指を咥えた。ローは嫌がる素振りも見せずにそれを受け入れ、されるがままにした。
ローは愛しそうにガルフを見つめた。イヴもそれを見て目を細めた。


「この子は海賊になるのかしら、医者になるのかしら。それとも海軍?」

「さァな」

「『パパみたいに格好良い海賊になるんだ!』なんて言い始めたらどうしようかしら」

「好きにさせたら良いんじゃねェか」

「そうね。何にせよ元気に育てなきゃね」

「そうだな。大事にする、お前もこいつも」


ガルフはローの指を咥えたままうつらうつらと目を閉じ始めた。


「一番大事なのはあなたの命よ、ロー」

「……そうか」


感慨深そうにローは言ってガルフをまた愛しそうに見つめた。





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