鈍行列車 | ナノ
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デコンポーザーの鮮やかな青緑色に包まれた瞬間、俺は確かに諦めたのだった。
執行官を続けること。この世界で生きていくこと。シビュラに支配された現代の理不尽さなどとうの昔に知っていたというのに、俺はまだ心のどこかで希望を持っていたのだろう。
やってらんねえよ、クソが。希望なんてありゃしなかった。生き別れになった両親も、訪れるはずだった青春も、将来の選択肢も。結局みんな俺の手をこぼれていった。

あーあ。惜しくないわけがない。ようやく手に入れた居心地のいい場所に、俺はもう戻れないのだ。
縢。縢くん。シュウちゃん。たくさんの声が色めき立ちながら俺の名前を呼ぶ。あの呆れた声は征陸のとっつぁんか。無茶なことはするなっていっつも言われてたのにさ、悪かったよ。んで棘のある声はギノさんだな。はは、こっちは怒ってら。心当たりがあり過ぎていけねえや。最後なんだから全部水に流してくれてもいいだろ。
クニっちとセンセ、相変わらずだよなあ。人の走馬灯でさえ見せつけちゃってさ、お熱いのなんの。お幸せにどうぞ。ね、コウちゃんもそう思うっしょ。
朱ちゃん。コウちゃんのことよろしくしてよ。見ての通りむっつりボクネンジンだけど。え? 余計なこと言うなって? そりゃ無理なお願いだよ、こうやってみんなと駄弁るのがさ、俺には結構、めちゃくちゃ大事な時間だったんだからさ。……わかる? わかんねえか。
頭の中で反響し、やがて聞こえなくなる。鮮やかな青緑色も、もう見えない。暗闇だ。暗闇の中に一人だけ身体がぽつんと浮かんでいる。まるで夜の海に沈む舟みたいだ。

……死んだんだ。俺は。

静まり返った世界で俺は冷静に考えた。
俺は生きていたかったんだろうか。危険分子を容赦なく弾き出すシステムが鎮座するあの社会で。
たぶん、生きていても仕様のない人生だった。首を繋がれた猟犬。それが俺のすべてだった。

あの場所に希望はあったのにさ。
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