無題



たぶんこれの続き


朝から雨が降っている日だった。


「要、その問題解き終わった?」
「ん?あぁ」


放課後の教室。
要と悠太は数日後に行われる模試に向けて勉強していた。
学校に残って勉強していくと言ったら、千鶴は「えー、そんなにガリガリしなくてもー」と言いながら祐希と一緒に帰っていった。
春も用事があるらしく学校にはいなかったので、いつものメンバーを気にすることなく自分たちのペースで勉強に集中することができてありがたい、と要は思った。


「この問題教えてくれない?」


何より、いつも悠太に絡みついてくる祐希がおらず、目の前にいる悠太を占領できることに優越感を覚えた。


「これはこの問題と似てるだろ?」
「うん」
「だからここを応用すれば…」
「あぁー、なるほど」


悠太は必ず要が問題を解き終える頃にわからないところを聞いてくる。
そういうさり気ない気遣いが心地よく感じる。
それは、いつも周りに気を配れる悠太にとっては特別なことではなくてごく当たり前のことなんだろうと要は思った。


「ありがとう」


悠太はそう言って微笑んだ。
その顔を誰にも向けてほしくないと、自分だけがその顔を知っていればいいと、そう思った。
勝手だという自覚はあるけれど。


「そろそろ帰るか」
「そうだね」


一度大きく伸びをして荷物を整理する。
教室を出るとき、悠太が思い出したように言った。


「そういえば要髪伸びたね」


悠太が手を伸ばす。
そして要の髪に触れる。
細い指が要の髪を梳く。

そこまでの動作が要にはスローモーション映像のように感じられた。

悠太の指の感覚が髪を通して伝わると、急に悠太のことを意識してしまって、気が付くと要は悠太の手を払いのけていた。


「かなめ…?」


悠太の声で我に返る。
驚いた悠太の顔。
それはそうだろう。


「あ…悪い…」


理由を説明することもできず、要は逃げるようにその場を離れた。



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続けるつもりなかったんですがもう少し続きそうです…
次は悠太視点かな…

2013.02.17





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