夏の風物詩がお嫌いな方、ご注意下さい。


外が何やら騒がしい。
ついでに隣の部屋も。
宮城はついと首を傾げた。
隣の部屋は確か宮城の部下である上條が宿泊予定の筈なのだが。


―アイツ何してるんだ?


また何かドツボにはまって壁に頭突きでもかましているんだろうか。
それとも、例の彼氏君から電話でもかかってきて、その照れ隠しにやはり頭突きをかましているのだろうか。


―何にしても他の客にメーワクだぞ、上條。


宮城はそっと溜息をつく、すると程なくして壁越しの音はなくなった。
その代わり、今度は外が一際騒がしくなる。


「なんだなんだ一体こんな夜中に…」


何事かと確認しようと、宮城が自室からひょっこり顔を出すと、廊下にはもうてっきり室内にいるであろう上條と、ホテルの従業員数名の姿。
その上條が凄い剣幕でホテルの人間に詰め寄っていた。


「だから、今すぐ部屋を変えてくれって言ってるだろ!?」
「申し訳ありません、本日は全部屋満室でございまして…」
「こんな部屋に泊まれる訳がないだろ?!あんなお札ベタベタ貼りやがって気味が悪い!!絶対何かあっただろあの部屋!!!」


ヒートアップした止まる所を知らない上條を諫めようと、宮城はまぁまぁとその間に入る。


「どうしたんだ上條、今更部屋を変えてくれだなんて」
「それが酷いんですよ教授!あの部屋絶対何かありますって!!」


噛み付くように上條は宮城へと向き直る。


「お札だってベロベロに剥がれ落ちちゃいましたし」


そう腕を組んで上條が言った瞬間、ホテルの従業員の顔色がサッと引いたように見えたのは気のせいだろうか。


「…いや、ですから本日は別のお部屋を確保することができませんので、誠に申し訳ないのですが今回は全額返金という形で…」


しどろもどろの従業員に宮城は渋い顔をする。


「まあ待て上條。今からホテルほっぽり出されてどうするつもりだ?」


この時間だともう電車も終電を過ぎている。加えてこの時期に今から他のホテルをあたるのはなかなか難しいだろう。


「ですが…」
「ベッドの余りはありますよね?」


これ以上言い合っていても埒があかない。それに他の宿泊客にも迷惑だ。


結局、ホテルの従業員に掛け合って急遽宮城の部屋にもう一台ベッドを運び込むという形で落ち着いた。




-------< まだへ続く/>
(7.27up)






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