夏の風物詩がお嫌いな方、ご注意下さい。
部屋に入った瞬間、得体の知れない違和感を確かに感じた。
背中がぞわぞわと
鳥肌がざわざわと
お尻をさわさわと
・・・?!
「っつ?!」
慌てて後ろを振り向くが、そこには誰もいない。
今日は学会。
折角重苦しく気を遣う空間や、むさ暑苦しい教授陣からも解放されたというのに。
そして今しがた、手配してもらったホテルにチェックインして、やっと一人になれた筈だというのに。どういったことか、ちっとも気持ちが落ち着かない。
上條は、何となくイヤな予感がヒシヒシとして、壁面に掛かっていた絵画をじっと見た。
何の変哲もないフツーのインテリア。
でも気になるままにその面を裏に向けると、そこにはびっしりと貼りついた、札、札、札、のオンパレード。
予感的中。マ ジ か よ ?
びっしりと貼りつけられた札は、まるで上條を嘲笑うかのように、そして歓迎するかのように目の前でバラバラと剥がれ落ちる。
その様子を全部見届けるまでもなく、上條は取るものとりあえず手元のアタッシュケースを引っ掴むと、一目散に部屋を飛び出した。
そのまま一階のフロントへと一気に直行。
穏やかな笑みを浮かべたフロント嬢にズズイッと詰め寄る。
「3階角部屋!!」
「はい?」
いかがなされましたかときょとんとしたフロント嬢に構わず上條は声を張り上げる。
「あの部屋何かあるだろ?!責任者出せ!!!」