なんかコイツ…というかコイツら変な所で抜けてるよな。
ヒロキはくすっと笑います。
「しょうがねーな。お前が出てる間にそのシノッチャウオジサンとやらに乗っ取られないよう俺が留守番しといてやるよ」
「えっ?!本当ですか?」
「ああ、お前らなんか抜けてるみたいだから、俺がこの家を守ってやる」
実は「ただいまです」と帰ってきて、「おかえりなさい」と言ってくれる誰かがいるのをノワキはずっと憧れていたのです。
「まあ留守番と言っても本当にいるだけ、って感じだけどな」
「いいえ、それだけでも嬉しいです。ではしばらくこの家に居て下さるんですね?」
「ああ、世話になるけどよろしくな」
そう、しばらく。しばらくは戻りたくない。
アキヒコのこと、まだ忘れられないから。
そんなヒロキの胸の内も知らず、新しい同居人が増えたことでノワキ(達)はそわそわし始めました。
どうやら興奮すると勝手に増えるみたいです。
「ああそうだ!」
ノワキが叫びます。
「お名前を」
「へ?」
「他国からいらしたならお名前があるはずなので」
「ノワキ以外のお名前を」
「どうかお名前を!」
「お名前を教えてくれませんか?」
期待を込めて見つめられて、ヒロキはなんだかこそばゆいような照れ臭い感じでそっぽを向いて「ヒロキ」と小さく呟きました。
途端、ノワキ達はキラキラと瞳を輝かせました。
ヒロキ。ヒロキ。ああ、なんて素敵な響き。
この世で一番綺麗な名前。
**
暗い暗い塔の中、鏡を覗いてクロのノワキはたずねます。
鏡よ、鏡。世界で一番美しい名前は何?
『それは“ヒロキ”です』
ああ、やっと、見つけた!!!
-------< この国のノワキは、ややこしい/続く>
(10.24up)