学園祭が始まる数日前。私のクラスはメイド喫茶をするのだが、悪ふざけした男子が「誰か女装しろよ!」と言い出した。ここまではよかったのだが、女子が「清水くんがいい!」と言い出した。私は必死に抵抗したが、終いには青峰くんが服をひっぺがそうとするものだから仕方なしに着替えた。(幸い時間的に更衣室には誰もいなかった。本当によかった)可愛い可愛いと言われている間はよかったが(いや良くないけど!)着替えを入れた袋を取り上げられ

「お前今日はずっとその格好でいてくれ」

と男子から懇願された。冗談じゃないと首をふる。

「男にこんな格好させてなにが楽しいんだよ!!」

真っ赤になって怒るも、クラスの人達には効いてないようで写真を撮られそうになる。私はこんな恥ずかしい格好を記録されたくないので、教室から逃げ出した。

……

屋上につづく踊り場で息をつく。どうしよう、着替えられない。かといってこの格好のままではいられない。「可愛い!女の子みたい!」という言葉に満更でもない自分が嫌になった。私は屋上の扉に頭をぐりぐりとぶつける。そんなことを数分していたがなにも解決しなかった。私はため息をついた。教室に戻って制服を返してもらおう、写真撮られたってもう仕方ない。くるりと踵を返す。するとそこには保全とした赤司くんがいた。

「あ、赤司くん!?」

なんでこんなところにいるんだ!?となにかに八つ当たりしたい気分になる。赤司くんには見られたくなかったこんな格好。

「清水……、驚いたよ、よく似合っているね」

赤司くんは保全としたままそういった。赤司くんに女の子の格好を褒めらて私の胸はきゅんとなった。しかし、私は男(という設定)なので喜ぶのはおかしい。

「なに言ってるんだよ失礼じゃないか !」

そう空々しく怒っておいた。赤司くんはハッとして「すまない」と申し訳なさそうに謝った。

「……どうしてここに?」

「緑間が清水が困ってるから助けてやってくれって連絡がきてね。」

赤司くんは手に提げている体育袋を私に寄越した。私はそれを有難く受け取る。昔は私の方がはるかに身長が高かったのだが赤司くんはメキメキ伸びて今は私と同じくらいの背丈なので大丈夫だろう。

「ありがとう」

「それにしても……」

赤司くんは珍しく眉間に皺をよせて呟いた。

「女子……みたいだな」

「!!!」

ひゅっと喉がなる。バレたか?いや、これはきっとただの感想だ。じゃあここで動揺しちゃダメだ。私は怒ったふりをする。赤司くんはいつもの人の良さそうな顔をして謝った。そして更衣室で赤司くんの体操服に着替えた。体操服から赤司くんの匂いがしてドキドキする。背丈は同じくらいのはずなのに少し大きくてびっくりした。外で待っていてくれた赤司くんが教室までついてきてくれて私の制服を返すように言ってくれたお陰で制服はすんなり返された。

「ごめんね赤司くん。洗って返すから」

「いや、気にしなくていいよ」

そういうわけにもいかないので明日絶対返すからと体操服は持ち帰った。もう1回匂いを嗅いだら変態だな、なんて自分を諫めた。

……

放課後、学園祭の準備をしている時メールアプリの着信音がして開いてみると、緑間から清水がメイド服を着せられて逃亡した。きっと困っているから助けてやってほしい、という旨のメールがきた。俺は顔がしかめられるのがわかった。男相手になにやっているんだ、たしかにあいつは可愛い顔をしているが、しかしきっと清水は嫌がったはずなのに限度というものがあるだろう。俺はメールアプリを閉じて体操服をもって教室からでる。

「赤司くんどうしたの?」

「少し急用ができてね」

クラスメイトはなにも疑問をもたずに送り出してくれた。普段から真面目だとこういうとき助かる。清水が逃げれそうな空き教室を探してみるも、いない。ならばきっと屋上かと検討をつけて行ってみると当たりで、清水は屋上につづく踊り場にいた。清水に声をかけようとした時、清水はくるりとこちらを向いた。

「!」

息を呑む。どこからどう見ても女子だった。女物の服を着れば肩幅などの布がきつくなるはずなのに、清水はそんなことはなかった。

「驚いたよ、よく似合っているね」

自然とそんな感想が漏れた。清水が怒ってハッとする。なにを考えているんだ。しかし、違和感は拭えなかった。……清水はもしかして女の子なんじゃないのか?そんなことを思っていると眉間にシワが寄った。そしてボソリと呟いてしまう。清水は怒った。……そうだな、女子であればいいなんて俺の願望にすぎない。俺は心の底から清水に謝った。体操服を貸して更衣室からでてきた清水にまた息を呑む。俺は細いほうなのに、さらに細く布を余らせた清水がでてきた。布が余ったせいで襟ぐりが深くなり、鎖骨がよく見える。こんな格好の清水を他のやつに見せたくない。俺は清水クラスまで行って清水の制服を早く返すように促した。清水は洗って体操服を返すことを俺に伝えると帰っていった。(部活の服はまた他にある)

「……清水はもしかして」

いや、考えすぎだ。俺のただの願望だ。清水が女の子かもしれないなんて、好きになった相手がそうだったらいいなんて思ってるだけだ。しかし、違和感は拭えなかった。

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