ごお
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左腕の傷もすっかり癒え、進級して私は5年生、工くんは4年生になった。

夏休みに入ったある日のこと。両親は共に出張にでかけており、晩御飯はお母さんが出かける前に作ってくれたチンするだけのチャーハンだ。それを食べ、歯を磨き、さあ寝ようとなったときに工くんがおもむろにテレビをつけた。

「姉ちゃん!なんか面白そうな番組やってる!」

「?」

工くんがテレビの前に座りワクワクした面持ちでテレビにかじりつく。私も工くんの隣に座ってそれを見る。その番組は心霊番組だった。なんとも子供騙しな番組だが、工くんは見ないほうがいいのではないか?夜ちゃんと寝れるのか?

「工くん、これ怖いやつだよ。見ないほうがいいよ」

「大丈夫だよ!姉ちゃんは怖いの?」

「............。」

別に怖くないが、工くんが心配だ。まあいざとなったら一緒に寝てあげるしトイレもついていってあげるけども。工くんくんはキラキラした眼差しでテレビを見る。そんな綺麗な瞳で見入ってる子を引き離すことなんてできないな。私はひっそりため息を吐いた。

......

「終わったし、寝よっか」

「............。」

工くんはびくりと肩をはねさせた。好奇心で最後まで見きった感じだが、終わったら後悔してるパターンだろう。ひっそり縮められていた距離でその恐怖心が伝わってくるようだ。私は立ち上がって寝室に向かうと工くんも慌てて付いてきた。(私の家は中学に上がるまで1人部屋は貰えない。小学校の間は家族みんなで寝ている)

布団を敷いて電気を消す。布団に潜り込んで隣を見ると工くんの布団が小刻みに揺れていた。

「工くん大丈夫?」

「大丈夫だよ!怖くないよ!」

別に怖いかどうかなんて聞いてないのだけど自分から言うあたりどれだけ怖いのかがよくわかる。私はそっと工くんに声をかけた。

「姉ちゃんは怖いな」

......

僕は布団の中で震えていた。心霊番組なんか見なければよかった。怖い、とても怖い。布団から出た瞬間にあの口裂け女が布団のそばで待ってるんじゃと思ってしまう。

「工くん大丈夫?」

「大丈夫だよ!怖くないよ!」

動揺しすぎていらない情報まで喋ってしまう。いらない情報を喋っているということに気づかないほど僕は怖かったのだ。どうしよう、怖い、寝れない。僕はぎゅっと目をつむった。すると姉ちゃんは信じられないことを言った。

「姉ちゃんは怖いな」

「!?」

怖い?姉ちゃんが?だってこっそり近寄ったとき、姉ちゃんは身震い一つしていなかったし、番組を見ているときは眉ひとつ動かしてなかった。僕は頭まで被っていた布団を少しずらし姉ちゃんを見る。

「だから、工くんの布団に入っていい?」

「............。」

すごく飛びつきたい提案だったけど、僕だって男だ。好きな女の子と同じ布団だなんて。僕たちは姉弟だけど、そこだけ見れば問題ないのかもしれないけど。迷っていいあぐねていると姉ちゃんは僕の布団にさっさと入ってきてしまった。

「ね、姉ちゃん!?」

「よしよし」

姉ちゃんは寝ている僕の頭をポンポンと撫でる。そしてぐっと僕を抱き寄せた。姉ちゃんの膨らみかけた胸に顔がいく。

「!?」

「おやすみ工くん」

おやすみ、じゃない!好きな女の子にこんなことされて無心でいられるほどもう幼くない。バクバクいう僕の心臓とは対象に姉ちゃんの心臓は一定のリズムを刻んでいた。姉ちゃんはちっとも緊張なんてしてないんだ。その事実が悔しい。すると姉ちゃんからすよすよという寝息が聞こえてきた。......もう寝た。僕は緊張して寝れないっていうのに。くそ、いつか姉ちゃんも緊張させてやりたい。そんなことを思っても、僕たちは姉弟で。それを自覚すると涙がでそうになった。どうせならこの役得を楽しもう。僕は姉ちゃんの背中に手を回した。


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