じゅう
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「ただいま!」

「おかえり」

リビングに勢いよく入ってきたのは今日白鳥沢の結果発表があった姉ちゃんで、このテンションだと受かったのだろうと俺はソファから立ちあがり、姉ちゃんのそばに行く。こんなに嬉しそうな姉ちゃんは初めて見る。

「工くん受かってたよ!やった!!」

姉ちゃんは俺に抱きついて飛び跳ねる。俺は姉ちゃんに抱きつかれたことによって頬に熱が集中した。

「ね、姉ちゃん落ち着いて......」

俺は姉ちゃんの肩に手を置いて姉ちゃんを剥がしにかかる。姉ちゃんはハッとして俺から離れた。

「ごめん、でも嬉しくて。」

「うん、合格おめでとう」

「ありがとう!!」

姉ちゃんは満面の笑みで微笑んだ。我が姉ながら可愛いだなんて思ってしまうのは惚れた弱みだろうか。

......

白鳥沢に無事合格し、5月になった。ゴールデンウィークが近づいてきた頃。私はなんの部活も入らずにバイトを始めた。

リビングでフローリングに敷かれたマットの上に座ってスマホをいじっていたら工くんが私の背中にもたれかかってきた。

「重いよ工くん」

「.........。」

工くんはぶすくれた顔で私に体重をかける。工くんには私に一つ不満があった。

「なんで姉ちゃん男バレのマネージャーじゃないの?」

そう、工くんは私が男バレのマネージャーになって待っててくれるものだと信じて疑ってなかったらしい。

「身内が同じ部活にいたらやりにくいでしょ?」

「.........。」

工くんはさらにぶすくれて私の背中にもっと体重をかけた。さっきまでは加減してくれていたことがわかる。重くなったなあこの子と工くんの成長を噛みしていると工くんがなにか呟いた。

「俺は姉ちゃんをマネージャーとして全国に連れてってやりたかったんだよ」

「?」

何を言っているのかいまいち聞き取れずに首をかしげる。

「......なんでもない」

工くんはしょんぼりしながら私から離れていった。背中から工くんの温みが消える。工くんはお風呂上がりの柔軟をしだした。今度は私が工くんの背中にもたれかかってやった。

「姉ちゃん!?」

「仕返し」

工くんは寝かしていた上体を無理やり起こした。私程度の重さならもう押さえ込めないのだろう。

「春高」

「?」

「春高なら私も見に行けるでしょ?連れてってね」

「!!」

工くんは一瞬目を見開いた。しかしすぐに笑顔になる。

「おう!」

そう言って柔軟を再開する。私は工くんの膝に手を置いて全体重を工くんにかける。

「はい、ペターンってしようね」

「ちょっ!ばっ!胸......!姉ちゃんのバカ!」

「ばっ......!?」

工くんは真っ赤になって起き上がる。しかし私にはそんなことを気づく余裕がなかった。バカと言われたことがショックだった。工くんはしょんぼりしている私を見て罪悪感を覚えているようだった。

「でも姉ちゃんが悪い」

「.........何が?」

工くんは救いようのない目を私に向けた。


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