全教科テストが返ってきた。なんとか赤点はなかった。赤点がないどころかいつもよりずっと点数がいい。得意教科にいたっては80点台を叩きだしていた。これもみょうじのおかげなのだろうか。悔しい。しかしみょうじもこんな点数は中々とれないんじゃないか!?と思い自慢するべくみょうじの席まで移動する。
「見ろみょうじ!」
バッとだしたテスト用紙をダルそうに見上げる。
「ちょっと下げてくれない?あんた背だけは無駄に高いんだから、見にくいんだけど」
「お前はほんと余計な言葉が多いな」
そう言いつつもテスト用紙を下げてやる。するとみょうじは更にダルそうに顔をしかめた。
「そんな点数で自慢しにきたの?」
「そんな点数!?白鳥沢で87点とったら上等だろ!?」
みょうじはダルそうに机の中からファイルをとりだし自分のテスト用紙を机に広げた。
「ぜ、全教科満点!!?」
「これくらいとってから自慢しにきなさいよ」
いやいや無理だろ。満点とか中々とれるもんじゃねーよ。3桁の点数とか初めて見たよ。嫌味か。
「だから監督みょうじに勉強教われって言ったのか。」
「そ、迷惑な話だけど」
独り言のつもりだったがみょうじは律儀に答えた。俺はみょうじの席に移動するときとは打って変わってテンションが落ちたまま席に戻った。化物というのは周りに結構いるものだ。
......
練習試合があった土曜日が過ぎ、月曜日がきた。だるいなと思いながら授業を消化する。まあ大半寝ているのだが。
待ちに待った昼休み、俺は購買で買ったパンをほくほくと持ち、友達の待つ教室に向かう。弁当もあるのだが足りない。だから購買でパンを買い足している。廊下を歩いてると1人ぽつんと窓の外を見ているみょうじがいた。
「なにしてんだ?」
声をかけるとみょうじがビクリと肩を震わす。そしてゆっくりとこちらを見る。
「...なんでもいいでしょ。」
「飯は食ったのか?」
「あんたには関係ない。」
「ふーん、なんで1人でいるの」
その質問をするとみょうじは忌々しそうな顔をした。ああ、こいつもしかして
「ぼっちか」
そう言うとみょうじはこちらを凄い勢いで睨んでくる。しかしその顔はどこか泣きそうでだ。こいつには何を言っても大丈夫と思っていたが、そうじゃないらしい。俺はいたたまれなくなり、こいつのこと嫌いなはずなのに同情からつい言ってしまった。
「俺が友達になってやろうか」
そう言うとみょうじは驚いたような顔をした。言った後に後悔した。なんだよ、漫画じゃあるまいし「友達になってやろうか」なんてドン引きだろう。みょうじにもばかにされる。そう思い目を伏せる。
「...ほんとう?」
しかし意外にもみょうじはどこか嬉しそうに言う。釣られて俺伏せた目をあげる。そこには満面の笑みのみょうじがいた。不覚にもその表情にドキンとする。
「じゃあさ、改めてよろしくね。五色」
「お、おう」
差し出された手を握ると思ったよりもずっと小さくて柔らかな手におののく。そうしてみょうじは照れくさそうにどこかへ行ってしまった。俺の心臓はドキドキなりっぱなしだった。いやいやありえねーだろ、あいつのあんな表情を見ただけで惚れるとか、ねーわ。俺は必死に自分に言い聞かせた。