▼02.
なまえと出会って2週間がたった。(2週間も経つと名前は呼び捨てで呼ぶようになった)なまえはほかの子供が来る前に帰ってしまう僕を不思議そうに、寂しそうに見送る。
「我愛羅とタツキと会わせたいのになー」
「う、うん」
ギイっとブランコに2人乗りしながらなまえはそんなことを言う。“タツキ”。僕が帰った後によく遊んでる友達らしい。当たり前かもしれないけど、なまえには僕以外の友達がいる。それが無性に悲しかった。僕は人柱力だ。化け物だ。恐らく“タツキ”という人物は僕のことを知ってるだろう。なまえも人柱力には近づくなと両親に教えられているらしいし、僕のことを人柱力とわかったら、きっと怯えて距離をとられてしまうだろう。それは絶対に嫌だった。絶対にほかの人がいる時になまえと会わないようにしないと。そう思っていたのに。
「タツキ!」
なまえは立ち漕ぎしていたのをやめてパッと飛び降りて公園の側で立ち尽くしている女の子の元へ走って行った。ぐにゃりと視界が歪む。なぜ?この時間には誰も来ないはずだったのに……。
「なまえ……あいつと遊んでたの?」
「うん!ほら話したじゃん、朝にしかいない友達!我愛羅っていうんだよ」
そんな声が聞こえる。僕は俯いてブランコの鎖を握りしめた。ジャラっと無機質な音が鳴る。
「あいつ、化け物だよ。今すぐ会うのやめたほうがいいよ」
「へ?」
なまえは何を言われたかわからないといった風にキョトンとしていた。
「なに、言ってるの?」
「あいつは我愛羅、風の国の人柱力だ。」
“タツキ”がそう言うとなまえはちらっと僕を見る。僕は顔をあげられずに鎖を握る力が無意識に強くなった。
「なまえは知らなかったみたいだけど……」
「そうなんだ。我愛羅が人柱力……。」
いやだな、もう聞きたくない。僕は耳を塞ぐ。しかしそんなことをしても無駄だということはわかっていた。耳の良い自分の聴力を恨む。
「でもね、タツキ。もう二度と我愛羅のこと“化け物”だなんて呼ばないで」
「は?」
「!」
僕はパッと顔を上げた。なまえの横顔は怒っていた。なにに?僕はなまえの言ったことも怒った表情の理由も理解できずにいた。
「我愛羅は優しい子だよ。私の大切な友達。化け物だなんて呼ばないで」
「事実だから!親切で言ってやってるんだよ!」
タツキという子の顔も険しくなる。
「我愛羅と一緒に遊んだことある?」
「はあ?あるわけないじゃん。殺されるよ」
「……我愛羅のことよく知りもしないでそんなこと言うな!」
なまえは顔を真っ赤にさせて怒る。タツキという子は少し怯んだようにあとじさった。
「なによ!なまえなんてもう知らないから!!絶交だから!」
「人の大切な友達化け物だなんていう子、こっちから願い下げだよ!!」
なまえがイーッと威嚇するとタツキという子は走り去って行った。なまえはふんと鼻を鳴らして僕の方へ歩いてくる。僕の前でピタリと止まる。僕はなまえを見上げた。
「我愛羅、人柱力って本当?」
「う、うん」
「私ね、人柱力ってもっと怖いと思ってた。きっと我愛羅が最初から人柱力って知ってたらタツキと同じ反応してたと思う。」
「…………。」
僕は俯く。そりゃそうだ。僕は化け物だもの。なまえはさっきああ言ってたけど、きっと勢いで言っちゃったんだ。僕のこともう嫌いなんだ。じわじわと涙が溢れてくる。泣いてるとは知られたくなかったので、僕はそれを拭うこともせずに放置した。涙はぎりぎり落ちないでいてくれていた。
「だから、我愛羅が優しい子だって最初に知れてよかった。」
「!」
「我愛羅は人柱力かもしれないけど、化け物を体に飼ってるかもしれないけど、その前に我愛羅なんだよね。よかったよ、そのことを知れて。だからさ」
顔をあげるとなまえは眩しいくらいの笑顔だった
「これからも友達だからね!」
ボロリと涙が双眸から落ちた。なまえはギョッとして僕の目元を拭う。
「なんで泣いてるの!!?」
「な、泣いてないよ」
「いや泣いてるし」
泣いてないと強がる僕になまえは「わかったから泣き止んでよ!」と困ったような顔をしていた。
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