どこかで、本の落ちる音がした


ぱさっ。どこかで、本の落ちる音がした。
同時にネズミの視界も反転する。紫苑の顔と天井が見えた。紫苑は驚いた顔をしている。

「ネズ…ミ…」
「何を驚いている」
「だってきみ…」

だってきみは、ぼくが簡単に組み敷ける人じゃないじゃないか。

「何考えてるの、ネズミ」

紫苑が戸惑って言った言葉に、ネズミはくくっと笑った。

「おまえが仕掛けたんだぜ」

ネズミの指がさらっと紫苑の頬に触れる。

「俺を抱くんだろ」

一瞬驚いたが、迷わず答えていた。

「うんそのつもり」
「だったら」

すぐに始めようじゃないか。

ネズミの長い指が紫苑のシャツのボタンをひとつひとつ外していく。優雅な動作だ。

「紫苑」
「え?」
「手が止まってる」
「あ、ごめん」
「見とれてたわけ?」
「え、ああ、うん」

ネズミはふふんと口端を歪めた。

「まさか、紫苑、おまえ童貞?」
「そうだけど」
「もったいないね、せっかく彼女が誘ってくれたことあったのに」
「沙布のこと?」
「それ以外にあったんだ?」
「沙布はそんなんじゃない」
「へえ?」
「からかうなよ、ネズミ。まさかきみ、嫉妬してるの」
ネズミの目がすっと細められる。
「このおれを煽ってんの」

一瞬で体制が逆転する。間を置かずに上から口付けが降ってくる。

「いい度胸してるじゃん」



もしおれが嫉妬してるとしたら?
その沙布って子はもう生きてないんじゃないの

え…ネズミ

心配ないさ
おまえの心はおれのもの、おれが一番よく知ってる

うん

早くしろよ
明日も早いんだからな

分かった
…ねぇネズミ、きみだってぼくを挑発してるよ

は?

明日、文句いわないでね


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