※注意※


・当方の刀剣乱舞知識はアニメ寄り、ゲームはビギナー。

・キャラ崩壊&かっこいい刀剣男士はいない。

・女性審神者で、性格はコミュ障でダメ審神者(基本、刀剣男士召喚&具現化以外のことは出来ない&基本バカです)。

・合言葉は“バファリンの半分は優しさで出来ている。夢あるあるの話の9割は捏造で出来ている。” 

・かなりのオリジナル設定&オリキャラ乱舞。

・この物語は、夢主のおバカ女審神者と長谷部は生まれた頃からの付き合いで、長谷部は夢主に過保護で大体それで事件が起きて、それに本丸の男士達が強制的に巻き込まれながらも生暖かい目で見守っている感じでお送りしております。

・長谷部と日本号の回想のネタバレあり。

・へしさに(主従愛)ですが、日本号視点。

・安定の駄文・駄作クオリティは通常運転。




以上を読んでもバッチコイの猛者の方のみお進み下さい。










オレの名前は日本号だ。天下3槍にして、槍でありながら官位持ちってところから俺の凄さを分かってもらえるはず……だが……どうも酒の飲み比べの賭けの対象品にされたせいか、その印象が強く、その話ばっかり先に出てくるのが……何ともなあ……。


そんなオレだが、最近、“時間遡行軍”とやらと戦うために現世に人の形を得て呼び戻され、政府とやらが用意したこの本丸で、若い……まあエライ別嬪の審神者の……変なネエチャンを主に頂き、オレと同じように人の形を得た刀剣たちとともにいるのだが……そこで以前の主である“黒田家”に仕えた懐かしい何振かと再会した。

いくら人の形を得ようとも、オレらは所詮は刀剣の中に宿った付喪神だ。
人間の性質がそう変わらないように、オレたちも、たかが数世紀の時間を経ようと早々変わろう筈がない。

案の定、厚も博多も小夜も……相変わらずだった。
ただ、あの堅物……長谷部だけは……堅物で融通が利かないのは相変わらずだが……頑なに黒田のことを話さないもんで、問い詰めたら……こう吐き捨てやがった。

『……長政様は良い方だった。付喪神にあの世があるのならば……ついて行きたかった。だが、俺が今、1番優先すべきは“今の主”だ……黒田のことは……話したくない。』


アイツの言う意味は分かるが、それでも、あれだけ恩義を受けた黒田に対して、あんまりだろう。今の主を大事にする気持ちは分からん話でもないが、それにしても言い方ってもんがあるだろうと、煮えくりかえった腸の熱を吐き捨てるように言葉にしてアイツにぶつけた。

『お前見るとたまに折りたくなる……寂しい奴だな……へし切長谷部。』

そんな俺に長谷部は口の端を歪め、オレにこう言い放った。

『……だからぁ?』

それ以来、遠征も討伐もアイツと一緒にならないせいか、それでなくても、あんな薄情な奴となんざ、口を聞く気も起きないんで丁度良かったが……奴とは、あれ以来、話はしていない。

博多から

『日本号のオッチャン……大人気なか。』

と言えわれ、厚からは

『……難しいことは分かんねーけど、ま、クヨクヨすんなよ!な!』

と謎の励ましを受け、小夜からも

『復讐を望むなら……力を貸すよ。』

と言われたが、確かに“折りたくなる”のは本音だが、本当に折るわけにもいかないのは流石のオレでも分かるので、小夜の好意は丁重に辞退したが(もし本当に折ったら、この本丸担当の役人の兄ちゃんが『さようなら、俺の出世街道』とか何とか言って泡食って白目向いて倒れかねねぇだろうし……あの審神者のネエチャンが全身の水分出す勢いで泣くからなあ……女に泣かれるのは……ちょっと……な……しかもエライ別嬪さんだからな……うちの審神者……アホだけど。)とは言え……小夜のヤツもう何世紀もたってるのに“復讐”が未だに己の全帰属意識っーのはどうなんだ。今度、江雪たち辺りに言っとくか……長谷部くらい切り替え早いのもどうかと思うが……小夜も小夜でなぁ……。


なんて考えながら、次郎達と酒盛りしていたオレは、ついポロッとコイツ等の前でも長谷部の薄情ぶりをこぼしたら

「……あら、あの子……ああ見えて可愛いとこあんのよ〜。ね?兄貴。」

なんて次郎のヤローが言うもんだからオレは盛大に眉をしかめて

「はあ?どこがだよ。相変わらず融通利かねえーし……あれだけ世話になった黒田の話したくないとか言いやがるんだぜ?」

と言い切ると一気に次郎が持ってきた日本酒の“立山”を煽った。
呑みやすく水みたいな酒だからと長谷部への苛立ちからか、今日はいつも以上に杯がすすんだ。
次郎はコロコロと笑いながら

「……主ちゃんと一緒にいるとこ見てごらんよ。忠犬……ハ?ハ……?「ハチ公ですよ。」

とド忘れした次郎に太郎が教えると、次郎はそうそうと頷き

「ハチ公みたいで可愛いじゃない!呼ばれるだけで見えない尻尾ガンガン振ってるわよ〜あの子。この間、主ちゃんと一期が泊りがけで会議行った時も1時間ごとに電話かけてたじゃないの〜。」

「……それにキレなかった一期一振がスゲーな。」

と溜息をつくオレの肩に次郎は手を置き

「まあまあ……今度、騙されたと思って……主ちゃんと一緒のとこ見てごらんよ。本当に可愛いから忠犬……えっーと……ハ、ハ、ハ、ハ、ハ「ハチ公ですよ。あのお役人は忠犬ハセ公と言っていましたが。」

言い終わると静かに呑む太郎の背中を次郎が笑いながら叩く姿を横目で見ながら、本当かねえと内心呟きオレも杯を煽った。



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「……あ〜っ。クソ……呑みすぎたか……。」

次郎達と酒盛りした翌日……というより、あれから明け方までガンガンと“天狗舞”やら“久保田”に“菊姫”を煽ったせいか妙に体がダルくて、おまけに頭が痛ぇなと思いながら、厨で水でももらうかと本丸の廊下を歩いていた。

まだ与えられた人型が魂になじんでないのか、あのタロジロ兄弟がバケモノ過ぎるのか……アレ位で2日酔いとは情けねえと思いながら、居間を通り過ぎようとした時、ふと中を見ると、引き籠りで有名なオレらの主である審神者のネエチャンが無防備な姿をさらして眠っている姿が目に入った。

(珍しいこともあるもんだ。顕現して以来……姿見たの久しぶりか。)

とネエチャンに近づき、顔を覗きこんだ。
相変わらずの別嬪ぶりに思わず見入るが、まあ、この別嬪ぶりも後、数10年もすれば……立派な皺くちゃ婆だろうと柔らかそうな頬を少し摘まんだ。

(どんなバアチャンになるんだろうな……まあ、何だかんだでエライ別嬪なことには違いねえから……品の良いバアチャンになるんだろうな……。)

ボンヤリと時々ムニムニと動く桜色の唇を眺めた。
小さくて、アホで、口下手で人付き合いが出来なくて……いつもオドオドしている……顔と神通力以外に取柄がなさそうな、それ以外は普通の人間の娘であるネエチャンに長谷部が固執する理由は矢張りオレには理解出来そうになかった。
何処を取っても……前の主の長政公より、はるかに劣るこんな小娘に拘る理由が分からなかった。今は次郎の言う通りに長谷部に纏わりつかれても、きっと死ねば……

「……アンタも忘れられるぜ……黒田みたいにな。」

とネエチャンの前髪を軽く摘まんだ時、居間に向かって走って来る足音と長谷部の声に、思わず隣の部屋にオレが隠れたのと、長谷部が居間に踏み込んで来るのとほぼ同時だった。

(危ねえ……しかしオレ何隠れてんだ。)

と襖の隙間から居間の様子を伺うと、眠っているネエチャンの方へ近づいた長谷部が傍に屈みこみ

「……主、主……こんなところで眠っては風邪をひきますよ。」

とオレらの前では出したこともないような声で囁きやがるから、オレは長谷部たちから目が離せなくなった。ネエチャンはよっぽど眠いのか、少し呻くが起きる様子はない。
そんなネエチャンに仕方ないとばかりに溜息をつくと長谷部は

「御体に触れる御無礼のお許しを……部屋に戻りましょう。」

と言い終わるが早いか、ネエチャンの体を横抱きにすると立ち上がった。
少し体が動いたからか長谷部の胸に頬を摺り寄せ甘えるようにヤツの服を掴むネエチャンを、長谷部は目を少しすがめて眺めた後、ギュッとネエチャンの体を引き寄せ、ネエチャンの後頭部に鼻先を埋めた。

まるで壊れ物で扱う様な……手中の珠に触れるようなヤツのその様子に、表情に……。
優し気な声に……。
見たこともない……その顔にオレは……。

「……ああ、アイツはもう……幸せだったんだな。」

とポツリと呟いた。
思い出を懐かしむ必要がない程に……。
黒田を心の支えにしなくても良い程に……。
あのネエチャンに満たして貰えたんだな。


『……長政様は良い方だった。付喪神にあの世があるのならば……ついて行きたかった。だが、俺が今、1番優先すべきは“今の主”だ……黒田のことは……話したくない。』


(だから……全部、過去形だった……わけ、か。)


話すことで黒田の思い出を変えたくねえから……辛い記憶も、楽しかった記憶も……話せば少しずつ変わっちまうこともある……だから……話したくなかったのか……忘れたくねえから……全てまんま覚えていたいから……と思い至ったオレは、ハハハッと笑うと片手を両目の上に置き、その場に座り込んだ。

「……可愛いとこ……あるじゃねえか……へし切長谷部。」

と天井を見てニヤリと笑った。
癪だが次郎の言う通り長谷部はネエチャンに関しては可愛いのかもしれねえなと思い、オレはヤツらが去った後の居間に入った。
心は昨日とは打って変わったように晴れやかだった。

「さぁて……今日も頑張るか……。」

不思議と体のダルさも頭の痛みも嘘のように消え去っていた。


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その夜、“折りたくなる”と言った詫びを長谷部に言ったら、盛大に眉を顰められ

「だから何だ?」

と言われたもんだから

「……訂正するぜ。やっぱ折りたくなる性格してるな……オマエ。」

コイツが可愛いのはネエチャンに関してだけだと思い知ると同時に、仲良くなれそうなのもネエチャンに関したコイツだけだと思ったオレだった。

(ん?待てよ……ということは……なんだ、あのネエチャン……役に立てるじゃねえか……。)

見上げた夜空には満天の星空が輝いていた。


―星降る夜のありふれた幸福





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