朝練時
「お誕生日ですね」
「せやな」
「お誕生日ですねぇ」
「おめでとうって言えや!」
「いやなんとなく癪で」
「なんでやねん」
「生理的に…」
「自分はほんまに俺を凹ませるのが上手いなぁ」
「(照)」
「照れるな!」
「プレゼントはあると思いますか」
「あるとええなぁと思います」
「何とあるんですよ」
「うっとうしいわ」
「何だと思いますか」
「せやなぁ、マネージャーからの真心(はぁと)とか?」
「死ねばいいのに」
「謝る」
「許す」
「で、結局なんなん?」
「今年は厳選してあります」
「ほうほう」
「絶対に先輩が『地球に産まれて良かった!』って思いますよ」
「自分で期待値上げるのしんどくないか?」
「別に……」
「……で、なんなん?」
「扇子です」
「いらんわ」
「間髪入れずにそれはひどいです」
「いらんわ」
「大阪土産で小学生がよく買う、セリフが書いてある扇子です」
「あー見たことあるわ。おおきにとかどないやねんとか書いてあるやつやろ」
「その通りです」
「いつ使うんや」
「突っ込み代わりに」
「いらんわ」「わたしからのメッセージだと思って受け取ってください」
「……何て書いてあるん?」
「それは見てからのお楽しみ」
昼休み
「っちゅーことがあったんやけど、今ここで開けてみようと思うんや」
「マジかよ、俺ならもらってすぐ見ちまうな」
「俺は気が長い方なんや」
「俺もそのシリーズの扇子とかキーホルダーとか見たことあるけど、……確かそれ、『好きやねん』があったはずなんだよな」
「岳人もそう思うか?俺もとうとうこの日が来たのかと午前中ニヤニヤが抑えられんかったわ」
「うっわきもちわりぃ」
「容赦ないなぁ」
「いいから早く開けてみろよ!」
「せやな!ほな行くで!」
な
ん
で
や
ね
ん
「………」
「…………」
「……なんでやねーん!!!!」
そして部活時
「……なんでやねん」
「は?いきなりなんですか」
「自分がくれた扇子や!」
「もう見たんですか」
「なんでやねんって書いてあったんやけど」
「…不思議ですね」
「せやから何で何でやねんなんや!」
「ややこしい文章ですね」
「普通わたしの気持ちです(はぁと)とか言ってたら告白やと思うやん!」
「はぁとなんてつけた記憶はありませんが」
「いや俺には見えた!あれははぁとやった!」
「幻です」
「弄ばれたわー」
「……先輩、わたしが好きやねんって送ってたらどうするつもりだったんですか」
「は?………そりゃ、なんでやねんって返すわー」
「死ねばいいのに」
「なんでやねん」
「死ねばいいのに」
「……冗談やんか。俺も好きやねんって返すわ(はぁと)」
「死ねばいいのに」
「なんでやねん!!」