月桜妖刀 | ナノ




拾八


―ねぇねぇ、僕…『嘘』ついてるんだ…

月を見上げながら外を歩く。
そして時折目に映る鬼に刀を抜いて、
一振りで切り殺す。

「僕が有明で…あの人が有明ってことは、
もう疑えないよね」

蒼央はそうつぶやき、
ある屋敷についた。

「蒼央…?!蒼央なのか?!」
「朱紅兄上…」

朱紅に近づくと、
蒼央が微笑んだ。

「ねぇ、兄上。もういいんだ」
「え?」
「もう、僕のために、『兄上』に使えなくていいよ。
僕がやるから」
「何…いって」

朱紅はとりあえず蒼央を部屋へと入れた。
すると、蒼央はきていた服を脱いだ。

「何して!」
「兄上…、ちゃんと見てくれ」
「…その傷」

蒼央の背中には大きな切傷。
そこまで深くなかったのか、傷跡は薄かった。

「僕が、『兄上』として動いた結果。」
「…本気、なのか?
それにしても、どうやって…」
「知ってるよ。『兄上』と出会ったときから。
兄上が僕の兄上じゃないってこと」

蒼央が服を着なおすと
朱紅は一枚の紙を持ってきて、
彼女に渡した。

「蒼央、これが、君の本当の名前だ。」
「え?」

蒼央がその紙を開き、
細く微笑んだ。

「今までありがとうございました。
兄上、いえ…榊朱紅殿」
「…あぁ、坂本…っ…いや、まってくれ」
「なんでしょうか?」
「確かに、ここは、もう、違うかもしれないけど…
私のこと…兄として、呼んではくれないか?」
「…いいの?」
「あぁ、もちろん」

蒼央は瞳に涙を浮かべた。
そして微笑む。

「では、朱紅兄上…また!」
「あぁ、またな…」

蒼央は走り出した。
手紙を懐に収め、
屯所へと。

(あ、団子ー!)

うれしそうに団子屋により、
口に団子を入れる。
すると、
大声で名前を呼ばれた。

「蒼央!!!何をしている!!」
「あ、一っつぁんv」
「平助の真似はいらん!何をしていた!」
「え?団子」
「・・・」

蒼央の口にべっとりとついた蜜を見て、
大きく安堵のため息をついた。

「一さ「いなくなったかと、思った」

いきなり抱きしめられた蒼央は目を見開いた。

「はじめ…さ、あの、僕」
「蒼央、俺に言わせてくれないか?」
「え?」
「俺は…」

一が離れると、
蒼央の口元がきれいに…

(きれい…に?)
「なぁっ?!」
「だからいったのにぃ(笑」
「な、う、あ」
「早とちりだねぇ、
は、じ、め、ん?」
「はじめん?!」
「じゃにー!」
「ま、待て!!」

一を置いて走っていく蒼央
何もなかったことを喜んでいた。

・・・

「ただいまー!あ、ただいま、はにぃ土方さん」
「だから異国語を…っ…
話がある。こい」

土方につれてかれたのは土方の部屋だった。

「なんですか?鬼ふくちょー」
「…蒼央、脱げ」
「え?な、何?!なんで?!」
「早くっ、脱げっ!!」
「やっ、土方さっ?!」

後ろから服を引っ張られると、
服が肌蹴け、あらわになったのは背中の傷。

「…蒼央、答えろ。
これは、いつできた」
「…小さいころです」
「嘘をいうな。
それに、嘘をつくな。二つも」

前を隠す蒼央の頬に触れると、
悲しそうに顔をゆがめた。

「俺が、つけた傷。だろう」
「…そうです。土方さん」
「…なぜお前がついている?
俺は確かに、坂本竜馬を…「その坂本竜馬が…僕だったとしたら?」
「…何?」
「…嘘ですよ、いったじゃないですか。
鬼にやられた、って」

蒼央はそういうと、服を直し、
立ち上がった。

「でも、後ろ傷。
だから…切腹…ですね」
「っ、それは仕方が」
「命令は絶対。でしょう?」

蒼央がそういうと、
土方は口を閉じた。

「でも、死ぬわけにはいかない。
だから…さようなら」
「待て!蒼央!俺は…」

土方が追いかけたときには遅かった。
いなかったのだ。
どこかへと、消えてしまった。


『真』

(僕の本当の名前は坂本)




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