今日はいい天気だ。
王宮の真ん中の庭の噴水に背を預けて、ユーリはぼんやりと空を見上げる。
空には何の鳥かはわからないが群れをなして飛んでいる。
ここからだと小さく見えるが、この南海に住む生物達は総じてスケールがデカイ。きっとあの鳥もユーリのいる地上にまで降りてきたらかなりの大きさなのだろう。
庭にはたくさんの種類の花が咲き誇っていて、ユーリの世界と似たような花も多い。
ただユーリはやっぱり違うので、もしかしたら似ているだけでまったく違う花かもしれない。
でも似ているだけでもあの世界とこの世界が繋がっているかもしれないと思えるので、この王宮に来た頃はここに来るだけで心が休まった。
そのせいかここは王宮のどこよりも落ちつく場所だ。
それにここは王宮の建物が囲むようになっているために、困った人がいればユーリが見つけるか、向こうが見つけてくれるので都合がいい。
噴水の水の音が心地いい。
先程アリババ達と食事をしたばかりなので眠気がやってくる。
よくここで寝てしまうとジャーファルに怒られるので寝てはいけないと思うのだけれども、もう眠気が引き返せないところまで来てしまっている。
「ふあああ」
「眠そうだな」
「シンさん……」
だいぶとろんとした目で見ればシンドバッドは苦笑する。
いつもなら開口一番仕事と言うユーリだが、眠気が勝ってシンドバッドの名前を呟くだけだ。
「……何してるんですか」
「膝枕」
隣に座ったシンドバッドはユーリの方に倒れると、勝手にユーリの膝を枕にする。
「なんで私の膝でしてるんですか」
「いや、ちょうどいいと思って。昼寝しよう」
「ここで寝たら怒られますよ」
「その時は二人で怒られよう」
自分のことは棚に上げて言うと、シンドバッドはまるでいたずらっ子のような顔をして笑う。
「シンさんだけ怒られてくださいよ」
「俺のことを見捨て……る……」
言葉の途中でシンドバッドは寝息を立て始める。
そんなに眠かったのかと思いながら、ユーリは肩を落とす。
シンドバッドの頭しか乗っていないがそこそこ重みがある。落としてやろうかと思うが、一応国主の頭である。さすがに自重した。
「しびれたらシンさんのせいだ……」
そう呟くとついに瞼が降りる。
すぐにユーリからも寝息が聞こえてきた。
日差しはどこまでも優しくおだやかに二人に注いでいた。
それでいつのまにか眠ってしまって、目が覚めたら満面の笑みでおはようって言われたらいい。
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お題:)確かに恋だった
12/12/18 緋色来知