※サスケが小さくなってます






 長い会議が終わって、会議室から仕事場に戻り、椅子に腰かけ大きく息を吐いた。周りに同僚の姿は見えない。時計に目をやると15時過ぎで、おそらく多くが休憩に出て行ったのだろう。幸運にも今日の仕事は終わってしまった。その場でぐい、と伸びをして身体の力を抜く。脱力した身体にはこの椅子は少しばかり硬かった。帰って、早すぎるような気もするが熱い風呂に入って、そして夕食の前にひと眠りしよう。そう思って立ち上がった。
 ちょうどそのとき、後ろのドアが開く音が聞こえた。椅子を引いて少ない荷物を持ったところでゆっくり振り返る。ドアは開いていたけれど、そこに誰の姿もなかった。首を傾げて足を踏み出したところで足に軽い衝撃を受け、下に視線を下げてみる。すると、小さな子供が尻もちをついていた。
 その子供がキッと顔を上に向ける。まだアカデミーにも入学していないと思われる小さな身体。大きな丸い瞳、白い肌、桜色の唇。それから柔らかそうな黒髪が、見覚えのある風に後ろへ跳ねていた。どことなく、サスケに似ている。

「隠し子か!」

 思わず口をついて飛び出た言葉に自分でも驚いた。しかし、他人の空似と言うには似すぎているように思うし、どう考えても血縁関係があるようにしか見えない。残された可能性はサスケがどこぞの女との間に隠し子を作っていたこと。それから、あとひとつ。

「だれがかくしごだウスラトンカチ!」
「……お前、サスケか」

 この少年が、サスケ本人であるということ。どうやら、隠し子ではなく本人らしい。
 尻もちをついたままのサスケと視線を合わせようとその場にしゃがみこんだ。立たせてやろうと手を差し出すと、小さな手がそっとオレの指を掴む。すい、と立ったサスケはそれでもしゃがんだオレとそう差がないくらいの大きさだった。

「何がどうなって小さくなってんだよ…」

 困惑しながらも尋ねてみる。唇を尖らせたサスケは、いつもと違って随分と幼い表情だった。もちろん実際に身体が幼いのだから当然と言えば当然だった。
 サスケの話を要約すると、新薬を研究開発していた実験室に理由あって訪れた際に、運悪く薬を被ってしまい、気付くと子供の身体になっていた、ということらしい。

「ごだいめにきいてみたらそのうちにくすりがぬけてもとにもどるだろう、だってよ」

 舌っ足らずで、変声期を迎える前の高い声が鼓膜を揺らす。中身はしっかりとしているけれど、見た目はどうしても子供だ。その姿でしっかりと物を喋るから違和感というか、よく出来た子供を見ているようで、どうしたことか胸の内をくすぐられる心地がする。

「で? なんでここへ?」
「おまえもうしごとおわりだろ。こんなんじゃひとりだといろいろたいへんだからてつだえよ」

 小さい身体で偉そうなことを言うサスケに、どう表現すればいいか分からない感情に駆られる。その手を軽く引くと、いとも簡単に胸に飛び込んできた。わあ、なんて声を上げるサスケが可愛くてぎゅう、と抱き締める。

「じゃーオレんち来るか」
「や、まてシカマルんちはダメだって…おまえのおやにみられる」
「別に問題ねーだろ?」
「え、やだ……シカマルはいいけどほかにはみられたくない」

 なんて可愛いことを言うのだ、と眩暈を感じながらよしよしと頭を撫でる。やめろ、と小さな手が伸びてくるが、なんの障害にもならない。仕事も終わったことだし、小さなサスケを連れてサスケの家まで帰ることにしよう。そう思ってひょいとサスケを抱き上げた。

「ばかやめろ、じぶんであるける!」
「いいじゃねーか、抱っこさせろ」
「やーだー」

 じたばたと動くサスケをそのまま抱いて、仕事場を後にする。
 小さなサスケとの生活は、こんな風にして始まったのだった。



ちみサスといっしょ!






111218


 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -