小説 | ナノ

 第4話

第4話〜最後の一人は誰だろね?〜


格闘家、ノイを仲間にしたテッドとルウェ。これで仲間は三人目。
しかしルウェは何故かまだ、渋い顔をしています。

「どうしたのさ、あれだけ言ってた仲間が増えたんだよ?」
「あーー、それね?私すごーく大事なこと言い忘れてたんだけど、言っていい?」
「ん、何だ?」

正直色々とあった今までを振り返れば、今更一つや二つ問題が増えたところでどうもしない。ぶっちゃけ、テッドは今日一日でこの状況に慣れてしまっていました。
なのでルウェの次の言葉にも、多少―――、そう、本当に多少でしたが、驚きはしなかったのでした。代わりに、「あ、やっぱり」とは思いましたが。

「あのさ、私・・・回復魔法使えないの」
「アハハハハ、そんな気はした!」

魔法使いで村の人たちに薬を作ってあげることもあるルウェですが、彼女の得意魔法はあくまで火系統の魔法、それも攻撃魔法限定なのでした。

「あのね、火系統ならファ○ガとか、○ギラマくらいのが使えるのよ。でもホイ○とかそーいうのは本ッ当に無理なの。むしろ薬草使ったほうが早いっていうか、回復量多いっていうか………とにかく!」

「旅をする以上は至急早急!回復魔法の使える僧侶系職業を仲間にするのよ!」


そんな号令のもとに、最後のパーティーメンバー探しが始まったのでした。



とは言っても、小さな村です。大抵の人は職業:村人か木こり、もしくは猟師で、魔法系職業はあまりにも希少でした。
ルウェの年でそこそこ仕事があるのもほとんどそれが理由です。
そんな村の中で回復が出来る人を探そうとすれば最終的にある場所へたどり着きます。……そう、この村唯一の神殿(復活ポイント)に。


「おや、皆さまお久しぶりです。神殿に何かご用ですか?」
「あ、こんにちは、司祭さま」
「どーも、ナシル司祭!」
「こんにちは司祭様。ちょっと聞きたいことがあるのですけど」
「はいはい、何ですかな?」

ナシル司祭はにこにこと微笑んでいます。その顔はまさにたくさんの孫に囲まれたお爺ちゃんの如く、慈愛に溢れています。
実際この周囲だけ空気が和やかなのは気のせいではないでしょう。

そんなことはさて置いて、ルウェの聞きたいこととは「この神殿にいる僧侶を貸して欲しい」なんてことでした。

勿論ナシル司祭からの返事は「難しいですねぇ」という、あまり良いものではありませんでした。何しろ小さな村です、神殿の仕事は少ないですが僧侶だって少ないのです。
一人減ればその分負担が増えてしまう為あまり了承できる訳もなく、司祭はしばらく考えるような素振りを見せてから、近くにいた他の僧侶に話しかけました。

「すいません、あの子は今日も?」
「はい?…ああ、彼ですか?恐らくいると思います……って、司祭様、どちらへ?」
「いえね、私もそろそろあの子に何かさせなくてはと思いまして。丁度いい機会ですし、時には試練もいた仕方ないでしょう」
「彼を外に、ですか…それはまあ、私もそう思いますが…。また前のようにはならないですよね」
「ふふふ、今度は大丈夫でしょう。いいことを思い付きましたから。では皆さま、こちらへどうぞ」


テッド一行には分からない会話をして、ナシル司祭は神殿の奥へ来るように彼らを手招きしました。


神殿の奥は僧侶たちの住居スペース兼村の貴重な集会所になっています。
そこを通り抜けナシル司祭は神殿の奥、暗く冷えた方に向かいます。普段の神殿と真逆の雰囲気を醸し出している廊下を通る一行の顔は少し緊急気味でした。

「すいません、こちらの方は物置に使っている部屋ばかりでしてね、掃除があまり行き届いていないのですよ」

申し訳なさそうに言う司祭でしたが、掃除していないと言うわりには綺麗な廊下でした。蜘蛛の巣一つ張っていません。

「さて、この部屋ですが……少しお待ちを。ウェイン、入りますよ?」

ドアを開くと、そこは本の樹海でした。棚から溢れ床に積み上げられて、僅かに人一人が通れるほどの隙間しか開いていません。そんな惨状を前に司祭はすいすいと本の間を縫って歩き部屋の中に入っていきます。

「出てきなさい、ここにいることは分かっていますよ、ウェイン」
「………何か、用事か」

声がしたのは、一見誰もいないように見える一番大きな本の山からでした。それはまだ年若い、少年の声です。

「だ、誰っ?!」
「テッド、うるさいわよっ!」
「……誰か、いる?知らない声だ」

突然聞こえた声に驚いたテッドが出した声に、少年の声は固くなりました。

「司祭、それと誰か。僕はこの部屋を出る気はない。諦めて帰れ」
「そうですか。…んー、ここですね、と……はい、こんにちは、ウェイン」

拒絶する言葉を余所に司祭は声の発生源に向かい、一人の少年の首根っこを掴んで猫を運ぶかのように戻ってきました。

「あー…放せ、司祭ー」
「放したら逃げるでしょう、貴方は」
「に、逃げない……多分」
「はいはい、話を聞いてくれるなら、放してあげます」
「わかった、聞く、聞くから放せー……」

ジタバタしながら司祭に抵抗する少年は伸ばした青い髪を揺らし頭を振っています。

「司祭さま……そちらの、彼は?」
「ああ、彼はこの神殿の僧侶の一人で、名前はウェインです。はい、挨拶」
「うー、ウェイン・アルカード……よろしく、…だ」

司祭の手から逃れたウェインは乱れた髪を直しながらテッド逹に手を差し出しました。握手のつもりなのでしょうが、目線は明後日の方向に向き手は固く握りしめられています。
彼はウェイン・アルカード。
かつては村一番の神童と呼ばれ、首都にある学校へ学びに村を出たものの、何故か数年もせずに帰ってきて以来神殿の奥に籠って毎日祈りを捧げている、人見知りでひきこもりの僧侶でした。

「はぁ……ウェイン、手が開いていませんよ。それとせめて相手の方を見てください」
「あ、ああ……わ、わざとだ!」
「わざとっ?!」

コミュニケーションを図るどころか全力で遠ざかろうとするウェインに、テッドは苦笑いするしかありませんでした。

「で、司祭。何の用か」
「あ、そうそう、忘れるところでしたね。ウェイン、貴方ちょっと彼らと一緒に旅してきてくれません?」
「……なっ!え、え、何でっ?!」
「いえ、最近ウチの信者も少なくなってきたなと思いまして。丁度良いきか…折角ですから、貴方に布教活動に行ってもらいたいのです」
「嫌、こんな村の神殿にわざわざ来る信者がいるわ……「はい?」…なんでもない」

反論しようと口を開いたウェインですが、司祭の有無を言わせぬ笑顔に何も言えません。

「よろしい。ではテッドさんにルウェさん、彼をよろしくお願いしますね」
「は、はいっ……」

それはテッド逹も同じこと、司祭の笑顔を前に、引き攣った笑顔で頷くのでした。

「仕方ない…、世話になる。…レベル3、レベル2、レベル3…」

ウェインはそう言ってメンバーの顔を一人一秒くらいの間隔で見ていきました。

「レベル、ですって……!」

隣のルウェがそれは神の領域とかなんとか、やけに驚いていますが、それは今は置いといて。
新しい仲間が増えて、これで少しは負担も減るかな?とちょっと期待してしまうテッドなのでした。


『ウェインが仲間になった!』



パーティーがいっぱいになりました。
これ以上新しいメンバーはいれられません。






prev|next

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -