「成留ちゃん」
「あ、紗奈(奏哉の母)さん。」
 あたしは、もう日課になっているお見舞いに来ていた。
そこに、奏哉の妹、架耶ちゃんと
お父さん(高彦さんという)、お母さんの紗奈さんが
大集合していた。……やば。あたし、お邪魔虫かな?

「あ、きょ、今日は失礼します。」
「…井塚成留ちゃんと言ったね。」
 高彦さんと話すのは初めてのことだったけれど、
あたしはこの人が好きだった。
日本の古き良きお父さんみたいで(笑)
「は、はい。」
「奏哉のこと、いつも有難う。
だけどね。もう、解放してもいいんだよ?」
「え…?」
「おとうさん!」
「架耶は黙っていなさい。」

 心なしか、架耶ちゃんの目は赤く腫れぼったくなっていた。
どうしたんだろう。何か悩みでもあるのかな。
「奏哉の事なんだけれど、もう解放しようと思うんだ。」
「あの?解放ってどういうことですか?」
 薄々感じ取っていたけれど、分かりたくなくてわざと聞いた。
病院の冷房が一層キツく感じられた。
   サムイ。
「あと2週間だ。」
「?」
「奏哉の臓器を提供することが決まったんだ。」
 やっぱり。
「あの、それって、絶対ですか?」
「まぁ、無いと思うが…もしも意識が戻れば
……臓器を提供せずに済む。」
 ですよね。
「それで、2週間後の今日、友達と一緒に、
奏哉に…愚息に会いに来て欲しい。」

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