葵依side1



―若葉 葵依―
 
 春になると、とうとうあたし達の天下となる。
先輩が、卒業し、学校が、世界が新しくなる春。

あたしは、ゆっくりとした足取りで生徒会室へ向かった。
「あ、桜。」
 視界に入った、ひらひらと舞う桜。
それが、ある入学生の肩にとまった。
……しかも、本人気付いてないし。いっぱいいっぱいなんだろうな。

「花びら、ついてるわよ。」
 さりげなく、怖がらせないように取ってあげる。
すると、その新入生は顔を真っ赤にしながら、
「え?!……あ、ワカバせんぱい!」と言った。
「ふふ。気をつけてね。ここ、結構風が強いから。」
「ありがとうございます!」
やっぱり、後輩っていう存在は良い。かわいいし。
さっきの後輩に手を振ってまた足を進める。 良い天気だ。今日は。

 「…会長。」
 イキナリ手を掴まれた。
やだ、告白?!付き合うなんて無理だって、もう!!
そもそもあたしには好きな人がって……
「なぁんだ、芯か。」
「…。後輩の前で猫を被るのはやめろ。」
「えー?まぁ、いいじゃん。んで?なに?」

 芯(本名、黒原 芯)はトラブルが起きたといって、去って行った。
おいおい、置いてくなよ。 
あたしは芯の後ろ姿に向かって、ちょっとパンチを叩き込んだ。
右ストレート。
「……左か。」
「いや、右だからね?芯―??」
 まぁ、芯はまだ「右?左だろう…。」と良く通る声でぼやいていた。

 生徒会室につくと、なーるほど。大体事態が分かった。
半壊した我が城(生徒会室の事。)と、
あのちらちら見える赤い髪。
もぉ、ほんとに何とかならないのかなぁ?
   ・・・
うちの副会長。


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