「空と宇宙の中間地点」
カミサマは「いた」。
カミサマはアタシに何不自由の無い暮らしをぷれぜんとしてくれた。
オトーサンもオカーサンもにこにこしてアタシに「大好きだよ」って言った。うん、言った言った。
でもある日、カミサマは殺されました。
オカーサンの浮気が発覚しました。
部屋の中でキモチワルイ怒声が渦巻くなか、オカーサンは言いました。
「貴方がっ!貴方が私を殴るから!!嫌なことがあるとすぐ殴って!!私よりも収入も低いくせに威張って。
第一、永久さえ居なければ結婚なんてしなかった!」
オカーサンは言いたいこと言ったら出て行きました。
オトーサンはオカーサンが出て行った怒りをぶつける様にアタシを殴りました。
「お前のせいだ、お前のせいだ。お前さえ居なければ、俺たちは幸せだった。」
オトーサンとオカーサンは出来ちゃった婚だった、らしい。
要するに、アタシは望まれなかった子。
「どうして」とか「何で」よりも「嗚呼、カミサマは死んじゃったのね」って思った。
あれからオトーサンは酒を飲んではアタシを殴る、という毎日だった。
悲鳴の様な声を撒き散らす姿は醜いだけ。
「何所に行ったんだ」と絶叫するオトーサン。
馬鹿だよ、ばか。
オカーサンならオトーサンのせいで出てったよ。
**************
ぐしゃ。
鈍い音が、響いた。
視界を埋め尽くす赤、赫(あか)。
そして、銀色。
倒れたオトーサン。
銀色を握り締めたオカーサン。
オカーサンはアタシをダキシメタ。
「もう、辛い思いをしなくていいの。
ごめんね、ごめんね。
永久は悪くないの。だから、」
「だから、コロシタ?どうして、」
オカーサンの口が動く。
響くサイレン。
うまく聞き取れない。
赤い血みたいなライト。
黒と白の服着たオニーサン達がオカーサンをアタシから引き離し、捕らえる。
オニーサンと一緒に来たオネーサンがアタシを抱きしめる。
何が、どうなってるの。
アタシが、何をしたって言うの。
アタシは、あ、ああ、ぁ、あああぁぁああ…
「あああぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁああああああああああああああ!!!!!!」
世界は、色を、失った。
…気がした。
**************
目が覚めたら、病院だった。
オトーサンは即死、オカーサンは刑務所で自殺だったらしい。
嘘だ、こんなの嘘。
アタシは悪くない、悪くないの。
アタシは悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪く悪く悪く悪悪悪悪い。
アタシが悪い。
アタシが悪いんだ。
アタシがアタシでなくなればいい。
きっと。
アタシがアタシだから、こんなことが。
アタシはアタシを捨てて、小生となる。
そしたら、二度とこんなことは、こんなことは。
**************
「カミサマ」は結局、「死んだ」。
「死んだ」ということは、人間だった。
じゃあ、その「カミサマ」を超えるものは、
「ウチュージン」
はは、それはいいな。
小生はカミサマを超えるウチュージンになる。
いや、ウチュージンだったのだ。
そう、人類をはるかに超えた!!
その日、空が泣いていた。
もどる