いつか呼ばせます | ナノ


泣き疲れて腕の中で眠ってしまった恋人を呼んでみるが、返事はおろか身じろぎもしなかった。
まだ鎧を着ていたままだったアルムは参ってしまう。

「絶対寝心地悪いよな…」

長時間抱いていればルカの肌に跡が付くだろうし、下手に動けば擦れて怪我をしてしまうかもしれない。
それだけはアルムは避けたかった。

ベッドに寝かそうにも、小さな手は隙間から出ていたアルムの鎧下をしっかり握って離さない。
充分に注意を払って片手で抱きかかえ、空いた方の手で1本1本鎧下から指を外して手を開かせても、もう片手が終わる頃には先に開かせた方がまた握っている。

どうしたものかと暫し考えて、アルムはルカを抱きかかえたまま部屋を出た。
しばらく歩いて、目的の部屋のドアをノックする。間延びした返事の後、部屋の主__パイソンが扉を開いた。

「あれ、大将じゃん。………あー」

意外な訪問者だと目を丸くしたのも束の間。
抱きかかえられているルカを見て「まあ入りなよ」と部屋の奥を指差した。

「ごめん。着替えたいんだけど、どうしてもルカが放してくれなくて」
「だろうね。ずーっと大将の事待ってたから」

眠っているルカをパイソンの体に預けるようにして支えてもらい、両手が自由になった所で鎧下を握る手を外してから、また指が閉じる前に素早くルカから離れた。

「泣き疲れて寝ちゃった感じでしょ」

言いながら、パイソンがルカを抱き直す。ルカは少し唸り声を上げたけれど、目は覚まさなかった。
これでようやく鎧を脱げると、アルムは息を吐く。

「よく分かったね」
「初日もそうだったのよ。頭はそのままって言ってるけど、本人無自覚で子供に戻ってる所あると思う」

その話を聞きたかったので尋ねようとしたが、パイソンに「今のうちに行ってきな」と急かされてしまった。

「ありがとう。行って来るよ」
「うん。でも目ぇ覚まして大将がいなかったら多分泣くから、なるべく早く戻って来てくんない?」
「分かった。急いで着替えてくる」

なるべく音を立てず静かに。でも急いで部屋に行き、着替えをしてまたパイソンの部屋へ向かう。
通路は小走りで進み、ドアを開ける時にはまた静かに。
ルカはまだ眠ったままだった。よかったとアルムは一息ついて、パイソンからルカを受け取る。

「起きたらたっぷり相手してやりなよ。アルムお兄ちゃん」
「あ。ルカにそう呼ぶようにお願いするの忘れてた」

面白がるようなパイソンの一言で、アルムはすっかり忘れていた事を思い出した。

(大将に余計な事思い出させちまった。ごめんなぁルカ)

部屋を出る二人を見送りながら、パイソンは頭の中だけでルカに詫びを入れた。



一区切り(のつもり)
これから単発で書いて行きます(予定)

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