デートその3 | ナノ
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「次はどこへ行くんですか?」

投げかけられた質問にアルムは「秘密」とだけ返して、街を歩く。相変わらず手は引いたまま。
まるで知っているかのように狭い路地をずんずん入って行くので、迷ってしまわないかとルカはキョロキョロ周りを見回しながらアルムに付いていった。

次々出てくる分かれ道を右に行ったり左に行ったり。
帰り道が分からなくなりそうになったところで、ようやく歩みが止まる。

「ここ」

一見すると普通の民家だったが、ドアに看板が掛けられていた。どうやら、何かの店らしい。
しかし、窓にはカーテンが引かれており営業している雰囲気はない。
よくよく見ると、看板は休業を知らせるものだった。

「アルムく…」

どういうつもりなのかと声を掛けようとすると、アルムは看板の文字など構わずにドアノブに手を掛けた。
ドアには鍵がかかっていなかったらしい。ちりんちりんと控えめなドアベルの音が鳴った。
その音でカウンターにいた初老の女性が顔を上げ、アルムの姿を見ると「どうも」とにこやかに言う。

店の中には数組のテーブルと椅子が並べられている。
カウンターには茶葉にカップ。どうやら喫茶店のようだとルカは思った。

「奥さんこんにちは。連れて来たよ」
「まあま、この方が…。今、主人を呼んできますから」

座って待っていてちょうだいと二人を奥のテーブル席に通して、厨房へ向かって行く。
この店の顔なじみなのだろうか。そう思ったルカが尋ねようとすると、先にアルムが口を開いた。

「デートの下見の時に、ここで材料集めの依頼受けたんだ。その時ルカが甘い物好きって話したらさ、とびきりのを食べさせてやるからぜひ連れてこいって」

喜ばせたくて黙ってたら、結局心配させちゃったけどね。と申し訳なさそうに言ったところで。

「アル坊!来たか」
「マスター、どうも」

けたたましい音を立てて男性……先程の夫人と同じくらいの年齢であろう喫茶店のマスターが、二人の前にやって来る。
アルムに声をひとつ掛け、それからまじまじルカを見つめてくるものだから、ルカもアルムに続いて「どうも」とぎこちない会釈をしてしまった。

「こいつがお前の言ってた奴だな?」
「ルカといいます。初めまして」
「ああ、よろしくな!」

露店で兄弟に間違われたのをしっかり気にしていたらしく「ルカは僕の大事な大事な恋人なんだ」とアルムはハッキリ関係を告げる。
それを聞いたマスターは歯を見せて笑い「愛想尽かされんように大事にしてやりな!」とアルムの背中を思い切り叩いた。

「大事にしてるよ。ねえルカ?」
「ええ。アルムくんにはとても良くしてもらっています」

やり取りを見た夫人も紅茶の入ったティーカップを置き「仲良しでいいわねえ」と微笑んで言った。



考えてるうちにダラダラ長く…

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