「しっろがねぇーー!!」
「チッ、凪冴かよ…。」
「チッて何よ、チッて。私はただね、劉黒様に頼まれて来てやってるんだから!」



そういいながらドサッと頼まれていた本の山を置く。
私は劉黒様に頼まれて、大量の本を持ってきたのだ。
じゃなきゃ、この胸糞悪い男に会わにゃならん影の世界になんか!
劉黒様の頼みじゃなければ…!



「なんだよ、その顔。」
「生れつきですが、何か?」
「可愛くねぇな。」
「アンタに可愛いなんて言われたら鳥肌立つわ!」



いつも通りの展開。
ここでいつもなら───。



『もう帰れよ、愛しのリューコ様のところに。』
『えぇ、言われなくても帰りますー!』



となるのに…
今日は何か…違ったんだ。



「どうせ劉黒が居ないと何にもできねぇくせに。」
「は…?」



質問の意味が分からなかった。



「…私が何にも…?」
「…口を開けばリューコ、リューコ。うぜぇんだよ。」



そういって、わざとらしく大きなため息をついていた。
何を急にうざいとか言われなきゃなんないの…?



「…王を慕って何が悪いの!」
「お前のは"慕う"じゃねぇだろ。」



「お前のは…───。」



白銀が言いかけたところで、私は背を向けて走った。
レイの私には影の世界は少し動きにくい。
でも、あの場にいるよりは幾分かましな気がした。
私は、私は、劉黒様を慕っているんだ。
"慕っている"と半ば言い聞かせるように心の中で繰り返した…──。



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