6月1日…水曜日。
テニス部の名簿をたまたま見た私は、驚愕の事実を知る──。
「仁王!ブン太!」
「んぉ…朱鷺原。どうしたんじゃ、血相変えて。」
「ユーレイでも見たのか?まだ、真昼間だぜぃ。」
昼休み、コンビニの袋を片手に歩いている二人の赤と銀。
名前を呼んだだけなのに、ケラケラを笑う二人の足を思いっ切り踏んでやった。
ふざけてる場合なんてない。
「「っい゛……っ!」」
「ふざけてる場合じゃないの!」
やっとちゃんと話を聞いてくれた。
始めからちゃんと聞け、アホ。
「あと3日……3日でサプライズを考えようと思ってるの!協力して!」
「…3日?3日後って…6月4日?…何かあったか?」
「バカブン太………蓮二の誕生日だよ!」
二つの声が『あぁ』と揃った。
こんにゃろ、忘れてやがったな…!
「で?サプライズすんのか?」
「うん!」
と元気よく返事をした私に対して、彼らが
『(バレる…だろうな)』
『(そうやのう…。ま、朱鷺原がやりたいんならやらしてやりんしゃい。)』
などと、ヒソヒソと内緒話をしているなんて、知らなかった。
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6月2日
「幸村!真田!サプライズパーティーしよ!」
「サプライズパーティー?」
「そういえば、土曜日は蓮二の誕生日だったね。」
部活の打ち合わせに来たのか、幸村の机の上にはプリントが散乱していた。
真田は相変わらず、腕を組んで立っている。
「蓮二がビックリするような事、やろうよ!」
「ふふ、じゃあ、朱鷺原が真田と浮気してるっていう噂流してみようか。」
「は?!それサプライズになんないじゃん!ってか、私は蓮二一筋ですから!」
ふいっと顔を背けると、幸村が笑いながら『ごめん、ごめん』と謝ってきた。
幸村の口から謝罪の言葉が(笑いながらではあるが)聞こえてきたので、許すとしよう。
「蓮二もきっと、泣いて喜ぶんじゃないかな。」
「えー?あの人が泣くぅ?それ一種のホラー……」
「若菜。」
『ん?』と後ろを振り返ると、そこにはサプライズパーティーをされる側の人間が。
「れ、れれれれ蓮二!!!」
「なんだ。」
「ど、ど、どうしたのぉ?何か、あったぁ?」
いかにも、『貴方にヒミツな事を話してました』と言わんばかりの反応に、幸村と真田は『あぁ、バレたな』と呆れ笑いをした。
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6月3日
「というわけでっ!!!!今日は蓮二の誕生日計画をします!」
ホワイトボードを背に、私は机を叩き皆の方に乗り出した。
今日は幸い、蓮二は生徒会で不在。
こんな時こそ、計画しなければ!
「計画…って、具体的に何するんだ?」
「おぉ、ジャッカルが喋った!」
「俺をなんだと思ってる…。」
まさか、第一声がジャッカルだなんて。
私の予想範囲外だったわ…。
周りが笑っている中、幸村がもう一度質問をした。
「で、本当に具体的にどうするの?」
「うーん…。あ、やっぱりここはベタな感じで行きますか!!」
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