教室に入り、授業が始まった。
授業中もよく分からないがすぐに若菜の事を考えてしまう…。
『告白…とか、した方がええんやろか…』
授業が終わると、ユウジが教科書を借りに俺のところにやってきた。





「なぁ、ユウジ…。お前、好きな子が出来たらどないする?」

「どないする、って…普通告白やろ。せぇへんと何も始まらんしな。……ん?何や、お前、恋しとんのか!相手小春やったら許さへんで!」

「大丈夫や。女子やで。」





笑いながら返すと、ひょっこりと視界に入る人物───。





「何々?恋バナ??」

「ぬぁっ!若菜!!」

「おー、朱鷺原。それがな、こいつ好きな子がおるらしいんや。」

「ちょ、ユウジ!!何言うてんねん、アホ!!」

「え?誰?謙也〜教えてや。協力したるで!」





協力……やて?
…協力出来るわけないやん……お前の事なんやから、アホ。





「お前には関係ない。簡単に首突っ込んでくんなや!」





自分の不甲斐なさにイラだって思わず大きな声を出してしまった。
若菜が知っているわけがない。
当たり前だ、俺はまだ告白も何もしてないのだから。




「…!謙也……?ご…ごめん…。」





あ、と思った時にはもう遅かった。
彼女は走って去ってしまう。
俺はただ、黙って見ている事しか出来なかった…。





「どないしてん、謙也…。」

「……。」





ユウジの声が雑音と共に耳に入ってきた気がした。
放課後の部活には唯一のマネージャーの姿はなく、彼女を探す部長の姿が目に映る。





「…謙也、若菜は?」

「……知らん。」





会いにくい。
さっきの事で悪かったとは思っている。
でも、謝っていない今会うのは非常に気まずいのだ。



『ちょっと探して来てや。』



白石の言葉に、急いで顔を上げた。
な、な、なんで…!





「はぁ!なんで俺…!」

「ごちゃごちゃ言うとったらアカン!早う!!」

「っ……おぉ…。」





勢いに押されて思わず返事をしてしまった。
白石が行けばええやん。
そう思いながら、教室へ向かった。





謙也を見送った白石は小さくため息をついた。





「(ほんま、不器用なやっちゃな。)」





ボソ、と呟いた言葉は誰にも聞かれずに空に消えた。





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