「朱鷺原さん、これ、柳くんに渡してくれない?」



そう言われて、いつものように笑顔で彼宛ての手紙を受け取った。
柳は昔から近寄りがたいオーラを出しているから、普通の女の子には話しかけ辛いのだろう。
ましてやラブレターなど、渡す前に見抜かれてしまいそうだ。
幼馴染みでなければ気軽に話し掛けることはできないと思う。
そういう点では特別な感じがして、少し嬉しい。



「柳、これ。」
「あぁ、朱鷺原。……またか。」



そういって静かに手紙を受け取る。
中学生になって、二人ともいつの間にか苗字で呼ぶようになっていた。
そこは少し、寂しいと思うのだが。



「柳、モテモテだねぇ。」




そうやっていつものように笑ってからかう。
どうせまた、断るんだろうし。
柳と私の関係が壊れる事はない……。
逆に言えば、進展することもない。
私のからかいに少し眉間にシワを寄せていた。



「じゃ。」



と言ってF組を後にした。
中1の時は私と柳が付き合っていると言う噂が流れたが、もう3年もいれば周りも私と柳が付き合っていないと分かってきた。
そんなこともあったな、と懐かしくなった。
そして今日も一日何事も無かった、と今は放課後だ。
そう思って帰ろうとした時───……



「や……なぎ…??」



柳らしき人が手紙の女の子と話していた。
も、もしかして……。
告白をOKする……とか……?
過ぎった予想を頭から掻き消そうとした…が。
べ、別に、柳が誰と付き合おうと私には関係ない。
幼馴染みの私には…──。
そう思い、足速に家路に付いた。



「はぁ…」



帰り道、何だかモヤモヤして公園に立ち寄った。
ブランコに座り、伸びていく自分の影をジッと見つめていた。
──…もし、柳に彼女が出来たら…
私は、今まで通りいたらいけないのだろうか。



「彼女さんはきっと、嫌だろうな…。」
「誰の彼女だ?」



聞き慣れた声が聞こえて、急いで顔をあげると、そこにはよく知った幼馴染みがいた。



「柳、どうしたの。」
「朱鷺原がここにいるような気がしてな。」



そうやって、優しい声で言うから、幼馴染みの境界線を越えたいと思ってしまう。



「柳、彼女は?」
「彼女?」
「放課後、話してたじゃん。」
「あぁ、部活の事でな。」
「部活…?」
「何だ、マネージャーと部員が話していて何か問題でもあるのか?」
「えっ、あ、いや…別に…」



マネージャー…だったんだ…。
私が勘違いしてただけなんだ。
馬鹿だなぁ、と思いながらもホッとしている自分がいた。



「変わらないな、この公園も。」



辺りの遊具を見渡し、思い出しているように話す柳。
彼の久しぶりに見る、昔の顔から目が話せなかった。



「覚えているか、皆が帰ってから俺達だけで暗くなるまで遊んでいたな。」
「あはは、そうそう、それで私が泣いて…。」
「あぁ、手を繋いで帰ったんだったな。」



思い出話に浸り、昔が恋しくなる。
あの時はまだ、柳と一緒に帰ってたな…。
ここ何年かは一緒に帰るなんて事は全くなく、すれ違いすらなかった。



「久しぶりに一緒に帰るか。」
「え…」



突然の提案に、驚きを隠せず、そして少しだけ、期待が見え隠れした。



「どうせ家は近いんだ。…それとも、俺と帰るところを見られて困る人でもいるのか?」
「…い…ないと思う。」
「何だ、好きな人でもいるのか。」



その言葉にまた目を丸くした。





next





Novel Top


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -