本人が目の前にいるせいで、目が異様に泳いだ。



「あ…い、いるよっ!」



裏返った声で返して、それから指を折ながら“彼”の事を話した。



「頭が良くてー、背が高くてー、運動が出来てー」



静かに難しい顔で聞いていた柳は『だいぶ限られるな』と言って笑った。
段々と震える自分を抑えながら、また指を折っていく。



「それから…て、テニスの事になるとすごく一生懸命で、帰り道にわざわざ私のところに来てくれて、手を繋いで…家に送ってくれて…、私の事…一番良、く…分かっ、てる…幼馴染…みで…。」



喉が熱く、声が震えるが一生懸命言葉を繋いだ。
明らかに柳の事だと分かってしまう。
──…それでもいい。
彼は私の腕を掴み、引き寄せた。
強い衝撃と共に柳の腕の中におさまっていた。



「…それは、告白と取っていいんだな?」



耳元で囁かれ、こくこく、と首を縦に振った。



「待ったかいが…あったな。」
「え?」



ふ、と笑う彼を見るのは久しぶりで、とても懐かしい。



「お前はいつも手紙を持ってきていただろう?あれがお前からだったら、と何度も思った。」
「…っ!」
「本当はもっと早く、言おうと思っていたんだ。」



データで分からなかったのか、と思う私に答える様に
『データでは気持ちが入ってしまって当てにならないからな。』と柳が言った。
驚く私をよそに、柳は腕の力を強める。



「若菜が、好きだ。」



そう、昔のように私の名前を呼ぶ声が…とても、とても愛しく聞こえる。



「若菜の気持ちを聞かせてくれないか?」



抱きしめられていた腕が静かに解かれた。
優しく微笑む彼に、涙が止まらない。



「…れ…蓮二が…好き、だ…よ。」



私がひっくひっくと肩を揺らすと、『泣き虫なところは変わっていないな。』と言いながら、私の髪を梳いた。
髪を梳いたその手が、私の右手と重なる。




昔のようにキュッと握り、握り返した二人は静かに唇を重ねた。





変わらないきみのまま
(この手を離さないで…─)





*************
切甘のつもり…
どんなのが切甘かわからない私(°□°;)


お題@確かに恋だった


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