数日間、軽い悪戯のようなものは続いた。

ノートにカミソリやカッターの刃のようなものが入っていた時は、漫画の世界か!とつっこむ余裕もあった。
何にせよ、大きな怪我をしないだけ、よかった。




「柳生、柳生、」




そう言って、A組の教室へ足を踏み入れる。
柳生は読書中らしくて、私に気付くと本を閉じ、こちらまで来てくれた。




「朱鷺原さん?どうかされたんですか?」

「…あ、あの…これ。…ありがとう。」




お礼と同時にジャージを差し出す。
先日借りたジャージだ。
『遅れてごめんね』と言うと『お気になさらず』と返してくれた。




「柳生…。」

「はい?」

「あのこと、皆には…内緒にしてくれる…?」




柳生を見上げると、一瞬驚いたような顔をして、『はい』と言ってまた柔らかく笑った。




「あぁ、そうだ。」

「?」

「今日の放課後空いていますか?」

「うん…空いてるけど…?」

「仁王くんの買い物に付き合うのですが、朱鷺原さんも一緒にどうですか?」

「え……」




どうですかって言われても、仁王の買い物なのに私がついて行ってもよいものか…。

迷惑じゃないかな……。




「迷惑…じゃなければ…」

「迷惑なわけなか。」

「…っ?!仁王!!」




いつの間にか後ろにいたのは仁王で、いきなり喋られて肩がビクッと大きくはねた。




「女子の意見も聞きたかったから、丁度ええじゃろ。朱鷺原も来んしゃい。」

「……あ…うん…。」




よく分からなかったが、来いと言われて断る理由もなく、放課後大人しく二人について行った。




「…で?どこに何を買いに行くの?」

「どこってわけでもないんじゃが…買うのは姉貴の誕生日プレゼントぜよ。」

「仁王のお姉さん…?」




仁王お姉さんいたんだー。
意外。
一人っ子かと思ってた。
というか、すごくいい弟だね。
私達は三人で色んな事を話しながらお店をいくつか回った。
やっと決まったと言うところで誰かの携帯が鳴った。




「俺じゃ」




と言いながら電話に出ていた。
あの様子からすると誰かに怒られているようだ。






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