「暇じゃのぅ…おーい、丸井何か面白い話しんしゃい」



いつもよりダラッと椅子に寄りかかる仁王に話しかけられたのは、隣でガムを膨らましたり割ったりを繰り返している丸井だ。



「面白い話ー?…あ゛ー恋バナとか?」
「お、面白そうやのぅ。丸井、好きな人居らんのか?」



何となくで言った一言に仁王は意外と食いついてきた。
“恋バナ”に反応した2年エースも顔を上げる。



「俺?俺は…そうだな……。今んとこいないぜぃ。」



丸井は素っ気なく返した。
のんきにガムを膨らましている。
これ以上聞いても面白くないと考えたのか、仁王は赤也に話をふった。



「赤也は?…その顔は居るようやのぅ。」
「え?へへっ…いやぁ…」



照れ、照れ、とニヤニヤしている顔を見ると、どうやらベタ惚れのようだ。
『誰だよ』と仁王と丸井が茶化す。



「えー、先輩達言わないで下さいよ!!」
「あぁ、言わんぜょ」
「大丈夫だぜぃ。」



じゃぁ…と赤也は少し咳払いをして、顔を近付けた。



「朱鷺原先輩…ッス!」
「「……はっ?!!!」」



仁王と丸井の反応に、赤也はキョトンとしていた。
ハッと気付き、先輩二人に詰め寄る。



「もしかして!二人も好きなんスか?!だめッスよ!一番始めに好きになったの、俺なんスから!!」
「「いや、好きになんねぇから。」」



二人で否定したが、まさか…赤也の好きな人が朱鷺原だとは。
考えもしなかった。



「…で?朱鷺原のどこに惚れたんじゃ?」
「えっと、一生懸命仕事するとことか、柳先輩に何言われてもめげないとことかー…とにかく、全部ッス!!」



ニカッと笑う赤也にますます複雑な気分になる二人だった。
これは、言うべきか言わないべきか…
仁王と丸井は二人で目を合わせて、アイコンタクトをとる。
数秒したところで決まった。



「あー、赤也そういや朱鷺原、彼氏いるみた……い゛゛ぐぁ?!」



彼氏と言ったとき、赤也の目の色が変わり、胸ぐらを掴まれた丸井。
……いや、マジで。充血しているのだ。



「彼氏?!誰ッスか!誰だよ!」
「あ、赤也、落ち着きんしゃい。朱鷺原にもそういう人くらいおるじゃろ。」
「……チッ。相手の男マジでぶっ飛ばす!」



何だか可哀想に思えてきた。
好きなのは朱鷺原で良いとして、ぶっ飛ばす対象が部活の先輩…しかもテニスでも勉強でも身長でも何でも敵わない柳蓮二だなんて。
可哀想すぎて俺達の口からは到底言えることではない。



「皆元気ー…って?あれ?プリガムレッドだけ?」
「あぁ、他の奴はまだだぜぃ。」
「……で、赤也はどうしたの?」



赤也の充血に気付いたのか、彼に近づく。
心配そうに顔を覗き込む。



「っ、だ、大丈夫ッスよ!」
「でも、顔も赤くなってるし…?」



そう言った直後…赤也が叫ぶ。
目はもう治ったようだ。



「朱鷺原先輩、彼氏いるんスか?!!」
「えっ??!」



彼氏…?
あれはもう彼氏なのか?
好きとは言われたけど、付き合ってくれとは一言も言わなかったし…
で!でも一応キ、キスもしたし…って言うか何気ディープだったからな…
て、ファーストキスでディープとか、アリなの?!
私とんでもない人を好きになっちゃった?!
あわわわ…



「───ん輩…先輩…?朱鷺原先輩?大丈夫っすか?」
「うぇぁ?!…う、うん、大丈夫だからっ!」



焦って返答する若菜の後ろのドアが開いた。
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