おいしいものを食べると、人は自然と笑っちゃうんだよ。千ちゃんのところから貰ってきた小豆で作ったから、きっとおいしいよ。自信作! 「……違う」 「あ?みんな大好きオサムちゃんが奢った甘味の、何が気に食わない言うねん」 大阪府某所。練習試合の帰りに、顧問が今日頑張ったご褒美や!と寄り道した甘味処で、財前は好物である善哉を頼んだ。 少しの淡い期待を胸に一口口にして見るも、やはり違う。 ……まあ、あの味の作り手がこんな近くにいる訳がないのだから、当たり前ともいうのだが。これはこれで美味しいし、文句は別にない。 珍しく食って掛かってくる顧問の声を無視し、無言で善哉を頬張っていれば、こういった空気に敏い、金色が口を挟んできた。 「あら?財前くん、口に合わへんかったの?」 「別に。期待してたのと、ちょっと、違っただけっすわ」 そう、少し違っただけのこと。 「なんやなんや、せやったら財前はその店で食べればいいやろ!」 「何オサムちゃんもぶすくれとんねん……」 「店なんてあらへんわ」 「…は?」 何を言っているのかわからない、といった顔で財前を見る顧問に、財前はわずかながら苛立ちを抱いた。 なんで、この人らにわざわざ言わないといけないのか。 「…………アホくさ」 がっと善哉の器を空にしてしまうと、財前はそこから、だんまりを決め込んだ。 back |