夜の京都駅の風景とは違って、東京駅ときたら煌びやかなものだ。
夜21時。学校が終わり次第、各部活先に指示書だけを提出し、颯爽と新幹線に乗り込んで約3時間半。少々腰は痛いが、空模様はこの東京でも星がわずか見える程度に良好。中々幸先のいい出だしではないだろうか。

「蛍さん。お帰りなさいませ」
『結城さん』

改札を出て駅の前につけてあった車の前に立っていたのは、うちで長いこと様々なことのお手伝いをしてくれている方だった。私が生まれてからは、少々過保護な父が手駒の中で優秀な若いのをと私の面倒見、兼、お目付け役にしたらしいが、その前は色々な仕事を任せられていて、父の側近をしていたこともあったらしい。
本当は、こんなところで私の子守をしているような人ではないのだ。
お荷物を、と、ほぼ必要な物は実家にあるので、軽い手荷物を結城さんが受け取ってくれる。車のドアを開いてエスコート。相変わらず完璧でそつがない。

「柳様は2時間ほど前にお二方のご友人と到着なされて、今はお父上様とご歓談中です」
『歓談ねぇ……会談の間違いじゃなくて?』
「確かに。そう解釈なされてもおかしくない雰囲気を出されておりましたよ。お父上が」

まったく、腹の探り合いが目に浮かぶようだ。
ほぼ揺れを感じさせないスムーズな動きで結城さんは車を発進させた。後部座席に座った私は、車窓から流れる東京の風景を眺める。離れていたのは少しだけだというのに、少し懐かしく感じるのはなぜだろうか。
……あ、こっちも桜がちらほら咲き始めてるんだ。
満開だった京都の桜を思い出しながら、そういえば少し前に征十郎がふざけたメールを柳くんに私のスマホから送っていた。……めんどくさいこと思い出しちゃったな。知らぬ存ぜぬで通すか、いや、そんなことをあけすけに聞いてくる勇気は今の柳くんにはなさそうだな。
思わずしてため息を吐いた私に、結城さんが気遣ってか声をかけた。

「学校の方はいかがですか?」
『征十郎のおかげで快適な学校生活を送れてるよ』
「確か、入学早々生徒会長になられたとか」
『相変わらず常人とは思えないよ』
「左様にございますね」

……事実、常人ではないと感じている。
あの日以来の征十郎は、完璧な征十郎となったのだから、もはや超人なんて呼ばれる域にいるのだろう。

『……柳くんは内部進学だっけ』
「はい。立海大附属中学校は、外部進学を希望しない限りは大学までのエスカレーター式と伺っております」


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