星降る夜に

バスケ以外の特技は?と聞かれれば少し考え込んでしまうが、趣味ならたくさんあった。生前の、多趣味だった母の影響である。
色々やったけど、長く続いていたのは音楽鑑賞やパズル、楽器の演奏、スポーツ、茶華道……ああ、糠床づくりもだ。基本的に何でも楽しんでやったけど、あれは本当に奥が深かった。

中でも1番好きだったのは天体観測だ。

趣味の幅を広げようと手を出したら思いのほかハマってしまって、使うことのなくなっていた白藤、赤司、緑間家の共有地を使いたいと言ったら、幼馴染達も好きになったものだから。
それぞれの屋敷からは少し遠い場所にあったけど、星を観るには最適な場所だった。
耳障りな人工の音も聞こえないし、光もない。けれど土地はちゃんと管理されているからきれいで、幼馴染3人で並んで寝っ転がって夜空を眺めていた。
私達はそれぞれ、いずれは家督を継がなければならない。そのプレッシャーとかは半端じゃなかったけど、嫌なことも辛いことも、星を眺めているとすべてがちっぽけなことに思えて忘れられた。
……今考えれば、幼いなりの現実逃避だったのかもしれない。
けど、3人揃って天体観測をする事は実際楽しかったし、何より日常生活を送る上での心の支えになっていたんだ。
3人揃っている限りは大丈夫。こうして並んで星を観ている、何も変わることはない。不変がないことは知っていたけど、それでもそう思っていたかった。

しかし、それはあの夏に終わりを迎えた。

「おい、看護師を帰らせてしまってよかったのか?」
『うん。何かあったら連絡するし、今日は2人に大事な話があるから』
「ほう…、俺もなのだよ」
「奇遇だな、蛍、真太郎。俺もお前達に話そうと思うことがあるんだ」

―――中学2年生の夏、全中大会後日。
3人で一緒に見よう、といつか約束した、ペルセウス座流星群が最高条件の元に見れると言われた、夜のことだった。


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