プシュケの嘆き [4/5]
最後に覚えているのは早乙女大尉に撃たれたこと。額近くに1発と、心臓に1発。
超能力で防ぐということもしなかったし、もしかしたらあの場に超能力対抗装置みたいなものがあって、できなかったかもしれない。でもなんだかそれでいいような気がして、ああやっと、私はこんな力使わなくても済むのかとちょっとだけ、…ほんの少しだけ、ほっとしていたような気もする。永い永い眠りにつくのだと。だから、本来なら私はあそこで、死んでいたはずなのだ。

「―――佳織さん!?嘘、なんで……起きてよ!佳織さんってば!!」

隊内で可愛がっていた妹分の声がしたような気がして、薄らと目を開けたのが運の尽き。
何かすごく慌てたような声で私の名前を呼ぶから、どうしたの、そんなに慌てなくていいんだよと声をかけようとして、そして、声が出なくてまず驚いた。……そして、周りの変わりようにも。

「あっ、目開けた!ばあちゃん生きてるよこの人!!」
「!!…っ、佳織さん!!よかった!ねえ、どこも痛くない?大丈夫なの?」
「か、管理官落ち着いて…」
「これが落ち着いていられるもんですか!今までずっと、消息不明だったのよ?!それが、こんな…昔のままで…」

不二子ちゃんの言葉に違和感を感じ、ようやく私はその時になって不二子ちゃん以外の人物に目を向けた。大人みたいになった不二子ちゃんはまだ面影があるからわかったけれど、それ以外は初対面のようで。強面のおじさんに、グラマーなお姉さん。小中学生くらいの女の子が3人に、最後、少女達の近くに立つ眼鏡の男に目を見張った。表情が凍るのがわかる。かすれ声で、思わず言葉に出した。

『……――さ…とめ……い…?』
「え?」

私を殺した、あの人にそっくり。なんでお前が不二子ちゃんといるわけ。
自分が入っていたカプセル型のそこから上体だけ起こすと、周りのカプセルや木々がミシミシ音を立て始めた。不二子ちゃんがハッとした顔でこっちを見るも、気にならない。ねえ、なんでお前がそんなとこにいるの。どういうことなの。まさか、不二子ちゃんに何か、

「やめて佳織さん!皆本クンは早乙女大尉じゃないわ!!」
『……早乙女大尉じゃ…ない…?』
「そうよ、あれは皆本光一クン!あの人とは、早乙女大尉とは違うの!」

何か、おかしい。
ぴたりとその場の何もかもの音が止んだのを、「止まった…」などと呆然とする面々を放置したままそう考える。そういえば不二子ちゃんはなぜこんなに大きくなっている?周りの風景もそうだ。昔みたいな自然が極端に少ないし、あの人達が来ている服装もそう。あんなに洋服を公に着ていれば、非国民などと罵られてしまう。それにあの腕についた時計のようなものは…?

プツンと糸が切れたように、その先は覚えていない。

ただ次に目覚めた時、私は清潔な随分と発達した病院のような一室にいて、そして賢木と名乗った医師と、かつての妹分に告げられた真実に閉口する。なんでいつも、こうなるかなぁ。ぼんやりと思いを巡らす。

―――あの日から既に何十年もの時が流れていたなんて、一体誰が想像しただろうか。
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