祓ったれ本舗 | ナノ



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小さい頃…街中で声を掛けられ
子役としてデビューする事になった。

元々TVを見ながら人の真似をする事が好きで
私は説明された役を上手く演じる事ができた。

人気が出て大変だけど楽しい毎日を過ごしていた。

そんなある日所属していた事務所と両親の間でゴタゴタがあり、私はいきなりTVから姿を消す事になった。

大人になった私は兄が立ち上げた事務所に入りまた役者をする事になった。



「なんで久しぶりの仕事がCMからなの」

「小夜が子役の時の最後がCMだったからそれに合わせる為だって社長が言ってた」



そう言って2番目の兄、謙弥は私のメイクをしていた。

1番目の兄は社長で2番目の兄はマネージャー兼メイク、衣装、髪型のセットをやってくれている。

昔の教訓で他人に任せるのは無理なのだそうだ。



「今日の仕事は化粧品のCMで紹介する化粧品を使うから、もし肌に合わない時は言ってくれ」

「はーい」



今回は久しぶりの仕事で緊張してるのもあるけど
ドラマ仕立てのCMだからなぁ…。

しかも相手役も居ない1人で演じる感じだし。
頭の中では完璧に出来てるけど…本番怖い。



「…緊張してる?」

「まぁ、久しぶりだし…」

「小夜なら大丈夫。」

「うん…。」



用意が終わり撮影スタジオへ向かう。

向かう途中もすれ違う人の視線が気になる。
兄がセットしてくれたから変では無いはず。
大丈夫。大丈夫。私は最強だ。

何故か自分でも分からないけど、
昔から最強なんだと思うと不思議と落ち着いた。

撮影スタジオの扉を開くとスタッフさん達がざわざわとし始める。



「今日はよろしくお願いします!」



私は大きめの声で挨拶をし、近づいてきた女性スタッフに連れられ私が演じる位置を細かく説明される。

昔諦めてしまった夢をまた追える。
それに…私は私の為に事務所を設立してくれた兄と、私の側で見守ろうとマネージャーになってくれた兄の為にも頑張らなきゃいけない。

深呼吸をして私の中で説明された女性になりきる。

私の役は天使で下界に降りて大切な人を作るところから始まり、その天使はいつも笑顔でその人の側に居ながら色々な葛藤をしている。

天使は人と生涯を遂げようとすると堕天になってしまうから笑顔だけど不意に見せる姿は悲しそうな笑みになる。

最後は大切な人にプロポーズされて泣きながらも覚悟をして本当の笑顔になって終わる。

もちろんこの一連の流れ、カメラを大切な人に見立て表情を作らなければならない。

CMディレクターの合図で撮影が始まった。
私はカメラに向かって笑いかけたりイタズラをしたり…そうやって順調に撮影が進み、最後のシーン。

きっとこの天使はこんな気持ちだったんだと
想像して私は涙を流す…そして笑顔で言うんだ。



「っ、愛してる」



CMディレクターがカメラを止めたタイミングでハッと我に帰る。



「ご、ごめんなさい!私勝手にセリフなんか言っちゃって…」



これは本当に私の悪い癖で、役に入るとセリフや行動をしてしまう時がある…これは子役時代から直らなかった。

あまりアドリブ好きじゃない人もいるし、私の考えている性格と作成側の考える性格は一致しない事ももちろんある。



「全然いいよ!これで行こう!」

「え、でも最後は静かに頷く方が…」

「いやー、表情と言い方がかなり良かったよ。私は君のファンでね。今回、君の演技を見れて嬉しいよ」



そう言ってCMディレクターと私は照れながら握手をした。





ーーーーー…。




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