私の大好きな人。
注意 本誌ネタを匂わせる表現をしています。
単行本勢は逃げて下さい。私は逃げきれなかった(
私には大好きな人が居る。
実家が和洋菓子のお店をやっていて、高校生の頃からお店の手伝いをしていた私は初めてその人が来た時かなり驚いた。
その人は制服でサングラスをしていて、身長は高いし足は長いし顔が良いし…こんな人間が実際に居るんだと思った。
「…聞いてんの?」
「あ、すみません!」
「店にある全種類1個づつ」
「ぜ、全種類1個づつですか?」
「そう」
「あ、ありがとうございます!」
初めて買いに来てくれた時は本当に焦った。
まさか全種類1個づつ買っていく人が居るなんて…。
でも、あの日から毎週1日は必ず来て悪態をつきながら洋菓子全種類とか和菓子全種類とか毎回いっぱい買ってくれた。
その人が来る事が私の楽しみになっていた。
でも一時期元気の無い時があり、サングラスから少し見える目元にクマが見えて私に出来る事を考えた。
私にはお菓子作りしかない。
勇気を出して「あの!もし食べたいお菓子があれば売ってない物でも作りますので言ってください!」と言った。
その人はびっくりした顔をした後、
笑って本当に遠慮なく注文をして行く。
「頼むのに来れない時もあるから」そう言って連絡先を交換してくれた。
そして私はその時初めて彼の名前を知った。
「五条さん!またお待ちしてますね。」
「来週分の僕用のお菓子よろしく。」
そう言って五条さんは帰って行った。
お菓子の予約とたまにある何気ないやり取りが嬉しかった。
両親からお店を継いだ時、おめでとうと言って来てくれた五条さんは目を包帯で隠していた。
怪我をしたのか聞こうとしても私にそんな勇気はない。
五条さんからしたらたまに連絡をとるただのお店の人であって、私みたいに特別な感情なんてない。
聞いてしまったらもう来てくれなくなるかもしれない…そう思い私は笑顔でいつも通り接客をする。
多分その頃からだったと思う。
買いに来てくれる時は必ず私にプレゼントだと色々な物をくれるようになった。
貰うのは申し訳ないと思って貰えないと言うと無理矢理置いて行く。
私の本音を言ってしまえば凄く嬉しかった。
五条さんからのプレゼント1つ1つが宝物になった。
◇ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◇
そしてあの日から何年が経っただろう。
少しづつ連絡を取り合う回数も増えて、五条さんのお願いで悟さんと呼ぶようになっていた。
でもある日からパッタリ連絡も来なくなり、悟さんが買いに来る事もなくなった。
でも元々から悟さんに「連絡も買いに来るのも出来なくなる時があるかも知れないけど、そうなったら待っててね」と言われていたから…心配で不安だったけど待つ事が出来た。
その日、私はいつも通り開店の準備をしていた。
「名前…」
「えっ」
懐かしい声が後から聞こえて
振り向いた瞬間抱きしめられていた。
すぐに悟さんだと気づき私は優しく話しかける。
「お帰りなさい…」
「うん。」
「待ってました…」
「ごめん心配かけて…でもまた行かなきゃいけなくて…」
「…はい。」
「もしかしたらもっと待たせるかも知れないけど…もし、名前が待っててくれるなら…戻って来た時に伝えたい事があるんだ…。」
「…ずっと、ずっと待ってますよ」
私がそう言うと悟さんは私から体を離し、初めてお店に来た時と同じように全種類1個づつ買って私の頭を撫でて「行ってきます」そう言って帰って行った。
きっと私はどんなに遅くても悟さんを待ってる…。
私の最初で最後の大好きな人だから…。
抱きしめられた温もりを絶対忘れない。
私は泣きそうな自分の頬を強くつねってから
開店の準備を続けた。
ーーーーー…。
あとがき
本誌をみてぐぁあああああああとなりながら
ぶわぁあああああと書きました。
続きを書くかは本誌次第…。
先生信じられないけど信じてるよ
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