心と嘘 前編
幼少期、大きなお屋敷に連れていかれた。
私は人の心が読める能力があり、両親が私を使って媚を売る為にここへ連れて来た事はすぐに分かった。
そこで初めて会った綺麗な男の子。
「お前何(誰こいつ)」
「あ、私は…今日連れてこられて」
「ふーん(大人達が言ってた奴か)」
「えっと…」
「お前、俺の心も読めんの?(どうなんだ?)」
「よ、読めるけど君のは見えない…」
私はその日嘘をついてしまった。
何故かあの瞳を見たら咄嗟に言ってしまった。
多分気味悪がられたくなかったんだと思う。
「つまんねー(よかった)」
「ごめんなさい…」
「…うぜーから謝んな(こいつ可愛いな)」
「え…」
「何?(怖がってる?)」
「い、いえ…」
今読めた心は気のせいだよね?
「もう帰れば(まだ帰んな)」
「お父さん達が戻ってきたら帰ります」
「あっそ(少し遊びたかったな)」
「…遊んでいきたいです」
「別にいいけど(少しだけ遊んでやる)」
この日から私と五条悟は仲良くなった。
もちろん私が悟の心を読めるから悟が嫌がる事は絶対しないし喜ぶ行動していたから…ズルかもしれないけど仲良くなれて私は凄く嬉しかった。
そして私は今でも最初の嘘をつき続けている。
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「おい名前行くぞ。おせーよ(早く早く)」
「まって、」
「五条、もうちょっと名前に優しくしろ(クズが)」
「硝子ちゃんありがとう。でも大丈夫だよ」
私達は高専に入っていた。
私は悟に呼ばれ、大人しく悟の後ろをついていく。
今日は私と悟が五条家に呼ばれ、行かなきゃならない。
私達は五条家に着くと着物に着替え
お偉いさん達が居るであろう部屋へと向かう。
「名前は俺の隣に居ればいいから(なんで名前まで)」
「うん、分かった」
そう言って部屋に入ると、
そこには五条家の人と何故か私の両親がいた。
私の両親は私にこっちに来なさいと言い、
私は戸惑いながらも両親の間へ座る。
悟は意味がわからないという顔をして
不機嫌そうに自分の座る位置へ腰を下ろした。
「今回のお話有り難く思っています(早く言わなければ)」
「先ほどもお伝えしましたが、娘は悟様の心も読めます。(早く終わらせなければ)」
私は両親の言葉に驚く。
確かに昔から両親は私が悟の心の声が読める事を知っている…でも何で今それをこの場で言うのか私には理解できなかった。
「それは本当ですか?(本当ならば決まりだ)」
「本当です。ほら、名前(早く言いなさい)」
私は怖くなり声が出ない。
悟に知られるのが怖くて怖くて仕方ない。
「ほら(早く言え)」
「それは…ほ、んと…です」
私はその場で嘘がつけなかった。
悟をチラッと見るとショックを受けたような顔をしていて、胸が締め付けられるような感覚になる。
頭の中が真っ白になり後頭部がヒヤッとする。
私は吐きそうになるのを我慢してその場をやり過ごした。
◇ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー◇
話が終わり、部屋に居た全員が外に出る。
部屋には私と悟の2人きりになった。
悟はこっちを見ずに部屋から出ようとする。
私は急いで立ち上がり「待って」と言って袖を掴むと悟は私の手を振り払った。
「触んな(触んな)」
「あ…」
悟が部屋から出ていくと私は膝から崩れ落ちる。
全部私が悪いのだ。
最初から素直に言っていたらこんな事にはならなかった。
瞳からポロポロと大粒の涙が溢れ出た。
ーーーーー…。
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