私が幼少期の頃大好きな母が居た。
暖かくて優しくてイタリア人だった母の瞳は私と同じブルーで髪も黒くてサラサラで本当に大好きだった。
ーーそんな母は殺された。
父は仕事が忙しい人で、
あまり家にいなかった。
その日の夜、家には私と母だけ。
私はその日も同じ時間に寝ていた。
母のベットで母より先に。
母の焦る声で目が覚め私は声も出ないほど驚いていた。そこに居たのは血だらけの母。
母が焦りながら私をベッドの下へ押し込める。
そこからの記憶はすこし曖昧だけれど
それが幼少期の私の記憶。
それからクソみたいな人生が待っていた。
父が大好きだった。
日本人の父は母と私を凄く愛してくれて優しかった。
ーー母が殺されるまでは。
父は母が死に酒浸りになっていた。
いつも何かにイラついて私を殴りつける。
泣いたらもっとイラつきが酷くなると理解出来てからは泣かないように我慢した。
金を稼いで来いと売られた事もあった。
おじさん相手に身体を触られ我慢しようとしたけれど恐怖ですぐに逃げだした。どうやって逃げたかも覚えて居ないほど夢中で走った。
父は理性を失って居たけれど馬鹿じゃなかった、傷は顔には作らないし身体の傷にはちゃんと跡が残らないように手当てもされた。手当をしている時だけ父は泣くのだ。「ごめん。ごめんな。」そう言いながら。
大嫌いだった父が死んだ。酒で酔ったまま車に飛び込んだらしい。私は泣いた。悲しくは無かったけれど嬉しくもない。なのに涙は止まらなかった。
ーーー私は泣きながら恨んだ。
あの時、何もできなかった自分を。
母を殺した犯人を。
母が殺されなければ父がおかしくなる事も私が父を大嫌いになる事もなかったのだ。
私の両親を返して…ーーーー。
ーーー。
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