▼ 八土/貧血ネタ
くらり、少し目が回った。サッと血が引く感覚に少々ヤバいと思い始める。
今俺はステージの上に立っている。表彰式とやらで、この間あった試合の賞状を貰うのだ。一人目が賞状を貰い、二人目に差し掛かった。俺は順番的に一番最後だから、七番目くらいだ。だけど今、相当ヤバい。これが貧血だと分かるのに時間はかからなかった。
とうとう耳鳴りまでしてきて、本格的に体が悲鳴を上げはじめる。だけどここで倒れるわけにはいかない。全校生徒の前で倒れるなんて、後で総悟に何て言われるか。
だけどそんな俺の思いとは裏腹に、体調はどんどん悪化していく。俺の番が来たけれど、もう目の前は殆ど真っ暗だった。賞状を読み上げている校長の顔は見えやしない。気がついたら意識がどこかに飛んでいた。今俺は気力だけで立っている状態だ。
だが、そんな状態も長くは続かず、賞状を受け取ったところで俺の意識は途絶えた。
「………?」
揺れる、揺れる。俺はゆっくり目を開けた。
「あ、起きた?」
「っ!?せんせ……っ」
「お前いきなり倒れるから先生びっくり」
俺は先生にお姫様抱っこをされた状態だった。
「顔赤くしちゃって、かわいー」
「ううううるさいっ」
叫ぶとまた頭がくらりとした。
「貧血だって、大丈夫?」
「もう平気だ」
「照れるなって」
「照れてねぇよ!」
「意地っ張りだな、」
ぎゅうと先生にしがみつく。廊下が静かだから、まだ皆は体育館にいるということだ。だから今はどれだけ先生にくっついても平気だ。俺は先生の白衣を強く握りしめた。
「ほうれん草食えよ、鉄分とれ」
「………はい」
「もうハラハラさせんじゃねぇぞ」
「……ごめんなさい」
2011/06/13 23:20
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