声帯不調

たいしたことないと思って放っておいたらこの様だ。風邪って結構あなどれない、今度からは全力で治そう。まさか風邪ごときで喉をやられるなんて、思ってもみなかった。ケホケホと咳込んでみても、試しに声を出してみても掠れた音しかでない。あ、これは本格的にヤバいなと思いつつもテロも事件も起きていないし。やることといったら書類整理と見廻りくらいだ。別に日常生活に支障がでることなんてないだろう、一日くらい喋らなくても生きていける。


「副長ー、朝からすいません。書類、どうします?」

「……」


前言撤回、やっぱり喋れないと少し不便だ。



「副長声でないんですかァ!?」

「……」


山崎に事のあらましを話すと耳元で叫ばれた。煩せぇと言い返せないのがもどかしい。ので一応殴っておいた。意志疎通くらいはこれでできる。涙目になりながらこちらを見てくる山崎。なんだよそんなに痛かったのかよ、いつものことだろ。


「喋れないと何かと不便ですし、メモ帳とペン常備しておけば何とかなりますよ」

「……」

「局長と沖田隊長には俺から言っておきますね」


そう言って立ち去ろうとする山崎の服を掴んだ。山崎はその反動で畳に頭から倒れ込んだ。近藤さんに言うのはいいが、総悟には言って欲しくない。できれば声がでない間は会いたくないのだ。声がでないのをいいことに何をされるか分からない。何するんですか、と振り向いた山崎に無言で訴える。何年も付き添ってきた仲だ、言葉を交わさなくとも目で分かるだろ、目で。そう念じながら山崎を睨みつけたら、山崎は何かを察したように頷いた。


「分かりました、マヨネーズ持ってきますね」


違ぇよ馬鹿。爽やかな笑顔で言った山崎を、とにかくもう一発殴っておいた。




総悟から逃げるべく、メモ帳とペンをポケットに突っ込んで外に出た。一日くらいサボっても大丈夫だろう。今日は書類もたいして溜まってないし、誰も文句は言わない筈だ。このまま何事もなく一日が過ぎ去ってしまえばいい。


「あ、土方じゃん偶然!」


そんな俺の願いも一秒後には散り行くのだが。
後ろから凄い勢いでぶつかって来たのは坂田銀時、コイツもまた面倒臭い奴だ。できれば会いたくなかったのだが、どこをうろついているか分からない故回避方法も分からない。
会いたかったとかほざきながらさりげなく腰に手を回して来る。まあ足を思いきり踏んでやったのだが。


「っふ、土方ァやるじゃない」

『うるせー馬鹿死ね』

「……あれ?何で紙?」

『風邪で声がでないんだよ』

「へー、ほー、はー」


あ、こいつ今何かを企んでるな。目が煌めいてやがる。絶対良くない事に違いない、俺にはわかる。
銀時はにこやかな笑顔で俺の肩を掴んだ。勿論いつものように何すんだとは叫べない。ギリギリと掴んでくる手を掴み返せば銀時もこれみよがしに掴み返してくる。振り払おうとしたもう片方の手も掴まれて完全に動きを封じられた。力ではこいつに敵わないのが悔しい。


「土方?今から時間いい?いいよねはい決定ー」

「―――っ!!」


そのままズルズルと路地裏に連行される。叫べないし体は押さえ付けられているし、抵抗という抵抗ができないのをいい事に銀時は俺を引きずっていく。


「声がでない土方も、いつもと違っていいよね」


こいつッ……!!
絶対嫌だという気持ちとは裏腹に俺は路地裏へと引き込まれた。




―――――――――――
このあとはお約束\(^p^)/
2012/05/24 01:56
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