▼ 悪夢
※前提
土方と銀時は一緒に万事屋やってます。神楽も新八も定春もいます。
土方さんは昔真選組副長をやってましたが、何者かに嵌められ裏切り者扱いされます。近藤は初めは土方のことを信じていましたが、絶対的な証拠が次々出てきて疑わざるをえない事態に。沖田は真選組を裏切った土方を完全に敵視してます。
組に居場所が無くなった土方は、行く当てもなくさ迷います。そんな時銀時に出会います。この時二人は初対面です。お人よしな銀時ですから、土方に万事屋に来いと声をかけます。この時既に神楽、新八、定春はいます。土方は断るも銀時に連行され泊まるはめに。
同じ時間を過ごしていくうちに、銀時は土方が仕事のできる男だということに気付きます。それで土方に万事屋をやらないかと誘います。やっぱり土方は断りますが、神楽と新八の強い押しに負けてしぶしぶ了承。今は銀時と神楽と一緒に暮らしてます。
前提長ぇ/(^o^)\
は、と夜中に土方は目を覚ました。汗をかいていて、纏わり付く服が憂鬱しい。
嫌な夢を見た。あれからどうしているか分からない過去の仲間の夢だ。土方はこうして時々過去の事を夢に見る。まだ自分の親友だったあの人が、自分の名前を呼んでくれていたあの頃を。
土方は静かに隣を見た。銀時は布団に包まって寝息をたてている。どうやら起きてはいないらしい。そのことにホッと息を吐いてまた布団へと潜り込んだ。
**
「トシちゃん、起きるアル!」
「………ん、」
「珍しいな、土方が寝坊なんて」
ゆさゆさと土方を揺するのは神楽。その様子をお玉片手のエプロン姿な銀時が見下ろしていた。
土方の朝は基本的に早い。まだ昔の頃の癖が抜けきっていないせいか、ゆったり流れる万事屋での時間にまだ身体がついていけていなかった。そんな中、土方が神楽より寝過ごすのは珍しい事だ。神楽なんかは、今日は槍が降るかもしれないとうんうん首を捻っていた。
「体調悪いのか?」
「……いや、大丈夫だ」
「そう、ならいいや。今日買い出し頼もうと思ってるんだけど、大丈夫?」
「ああ」
「酢昆布も買ってくるアル!」
「一箱だけな」
土方は神楽の頭をひとなでしてから立ち上がる。居間から漂ってくる良い匂いに、朝食は既に出来上がっていることを知る。きっと土方待ちだったのだろう。
土方が来てから大分仕事が回るようになってきた。事務能力に長けていた土方は、主に金銭的なことを任されている。依頼は銀時達が率先してこなしている。だから土方の仕事は買い物と万事屋の家計が上手く回るように調整する事が大部分を占めていた。
朝食を食べ終わり、銀時と神楽は依頼主の元へと向かう。その時に銀時が腰にさした木刀に無意識に目がいった。
組を抜けて以来、刀を持つことは無くなった。元々幕府に関係するものしか帯刀を許されないこのご時世。土方の愛刀は組を抜ける際没収されてしまった。それっきり、刀は握っていない。まあこんな暮らしをしている限り、刀を握る必要など無いに等しいがやっぱり心のどこかでは刀を欲している自分がいる。
「買い出しに行くか、」
そんな考えを振り払うように財布を握り外に出た。
外は晴れで気持ちの良い天気だった。買うものを書いたメモをポケットから取り出し確認する。と、土方の後ろに誰かがひたりとくっついた。背中に当てられているのは刃物、向けられる殺気は本物だった。
「真選組副長土方十四郎だな?」
「元、だけどな」
「一緒に来てもらおうか」
ぐい、とより刃物が強く当てられる。土方はメモをしまうとため息をついた。まさかまだ自分に恨みを持つ奴がいたなんて。確かに土方はたくさんの人間を殺してきて、恨まれるも同然のことをしてきたのだが。新しい生活を始めた今、銀時達に迷惑のかかる行為はなるべく取りたくない。それが自分の問題に巻き込む形であるなら尚更。
土方は大人しく男についていく。刀が無い今、体術でしか太刀打ちできない。だがそれでも圧倒的に不利な状況だ。
路地裏に入って少しした場所で男は立ち止まる。それから土方に向けて刀を振った。
「貴様は今ここで死ぬ」
「……」
確かに、この状況では本当に死ぬかもしれないと思った。でもそれでもいいかもしれない、そうも思った。銀時には悪いが、やはり土方は昔の事を忘れられない。いずれ銀時達まで巻き込んでしまうのではないかと恐れている自分がいる。噂では真選組は大分いい地位まで上りつめているとのことだ。本当は自分が仲間達と一緒に成し遂げたかった事。でももう今は無理だ。
そんな事を考えながら、振り下ろされる刀をただ呆然と見ていた。
―――ガキィン
刀と刀が交わる音がして、分散していた土方の意識がただ一点へと集中した。目の前の銀色が、土方を庇うようにして刀を受け止めている。見慣れた広い背中に、思わず声を漏らした。
「……あ、」
「オメェ馬鹿ですかァ?逃げるかどうかしろよな。てか何目ェつけられてんの」
いつものやる気の無い声で言って、銀時は刀を弾く。宙に舞った相手の真剣は土方のすぐそばに刺さった。相手の男は苦虫を噛んだような顔をして銀時を睨んだ。
「貴様、ソイツの仲間かッ」
「仲間っていうか、仕事仲間ですけど」
「仕事仲間?そうか、新しい職を見付けたのか」
男は嘲笑うように言葉を続ける。
「まさか人殺しが真っ当な職につけるなんてな。真選ぐ、」
男の言葉はそこまでしか続かなかった。土方がそばにあった刀で男の喉を切り裂いたからだ。動脈を斬った事により血が勢いよく飛び散り、土方を赤く濡らした。そこで、はっと気が付いたように刀から手を離す。カランと音をたてて刀は地面へと落ちて行った。
「土方、」
銀時は血まみれの土方に自身の着流しを被せ名前を呼ぶ。そのまま手を引いて万事屋までの道を走ろうとした。だがそれは土方に阻止された。
「自首する」
「何言ってんの……?」
「俺は人を殺した。人殺しだ」
そう、土方はもう真選組副長ではなくただの一般人。一般人が人を殺したら立派な犯罪になってしまう。
「正当防衛でいけるだろ」
「駄目だ、正当防衛にしてはやり過ぎだ。それに刀についた指紋ですぐバレる」
「あー、っくそ!いいんだよどうでもっ!いいから行くぞッ」
「ちょ、おい!」
銀時は今度こそ無理矢理土方の腕を引っ張ってその場を立ち去った。
**
「隊長、指紋の鑑定終わりました」
「で、誰のだったんでィ」
沖田の前には現場に転がっていた刀と死んでいた男の身元書類が並んでいる。男が腰にさしていた鞘から刀は男の物だと確定されたが、別の指紋がついていたのだ。
「ふくちょ……いえ、土方十四郎のものと一致しました」
山崎の控えめな声とは裏腹に、沖田からは殺気が感じられる。
「俺達裏切っといて、今更何をしようとしてんだ」
燃えるような赤い瞳に、刀がカチャリと音をたてた。
「今すぐ土方の居場所を掴め。土方はもう一般人だ、これは立派な犯罪になる」
「……はい」
「殺人容疑で土方十四郎を逮捕しろ」
みたいな感じで万事屋と真選組が土方絡みでごたごたしていくって話。
最初に絡むのは土方沖田か、沖田銀時か、どっちかだな。山崎はまだ土方さんを心の奥では信じてる感じ。近藤さんは怪しい、沖田さんは完全ダメだなコレ、っていう感じ。
土方さんに悪夢見せようとしたらこうなった\(^o^)/
2012/07/10 02:03
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